ADB、2022年と2023年の2年連続のマイナス成長を予測

(スリランカ)

アジア大洋州課

2022年10月04日

アジア開発銀行(ADB)は9月21日、「アジア経済見通し2022年改定版PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した。スリランカの2022年の経済見通しについては、4月予測の2.4%から、今回はマイナス8.8%に大幅に下方修正した。ADBは深刻な債務危機や大幅な外貨準備の減少、モノ不足などを理由とし、危機脱却のための財政・金融引き締め政策がさらに成長を下押しするとみている。スリランカは5月にデフォルトを宣言して以降、外貨準備不足の中、資金調達手段は極めて限定的となり、エネルギー危機や必需品不足のため、生活・ビジネス環境は大きく悪化した。2022年はこれまで、新型コロナウイルス感染の沈静化により、主力産業の観光業が盛り返したものの、2四半期連続のマイナス成長に沈んでいる(2022年9月20日記事参照)。

ADBはこうした危機の影響は2023年も続くと予測し、2023年のスリランカの経済成長率はマイナス3.3%と、2022年に続くマイナス成長を予測した。政治的混乱を引き起こした一因のインフレ率の予測についても、ADBは2023年の数値を6.7%から18.6%に引き上げた。時間とともにインフレ率は和らぐと分析するものの、2桁の上昇予測となっている。なお、直近のインフレ率は8月時点で70.2%だ。

ADBはスリランカ経済の下振れリスクとして、世界経済の不調、地政学的要因、財政の信認問題の金融セクターへの波及、海外からの資金調達制約、IMFプログラム履行の遅れ、政治的不確実性といった多くの問題を指摘した。経済危機脱却に必要なIMFからの支援状況について、9月23日付のロイターは、スリランカ中央銀行の当局者がIMF理事会は2022年末までに29億ドルのスリランカ向け金融支援を承認する見通しだと報じている。前向きな報道がされるものの、10月3日時点の対ドル相場は1ドル=360.0スリランカ・ルピーと、年初からは43.6%下落し、市場は先行き不安を払拭できずにいる。

(新田浩之)

(スリランカ)

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