米労働省、ギグワーカーの待遇改善の規則案発表

(米国)

ニューヨーク発

2022年10月13日

米国労働省は10月11日、単発で仕事を請け負う労働者、いわゆるギグワーカーについて、請負業者として誤分類しにくくする労働規制の変更案を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ギグワーカーが従業員に分類された場合、企業は最低賃金や残業代、福利厚生などを自社の規定などに沿って提供することとなり、ギグワーカーにとっては待遇の改善につながり得る。ニューヨーク州やマサチューセッツ州、カリフォルニア州などの州レベルではギグワーカーを保護しようとする同様の動きはあったが、連邦政府レベルでもギグワーカー保護に乗り出すかたちだ。

これまでは、労働者がどれだけ自ら仕事量や労働時間をコントロールできるかや、労働者が得る利益または損失を主に考慮して請負業者か否かが判断されていた。今後は特定の要因に重点を置くのではなく、労働者の利益や損失、雇用の継続性、雇用主の支配度、雇用主の事業にとって不可欠な労働かなど多くの要因を総合的に分析し、労働者が請負業者か否か判断するとしている。今回発表した変更案は10月13日から11月28日までパブリックコメントを募る。最終決定は2023年になるとみられている(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版10月12日)。

調査会社ZIPPIAによると、米国では少なくとも5,900万人がギグワーカーとして働いており、労働人口の約36%に相当する。一方で、企業にとっては自社の従業員でないとして、待遇などを巡ってギグワーカーと企業の間で訴訟に発展するなど、これまでもたびたび問題となっていた。今回の規則案は労働者側にとっては歓迎すべき変更だが、企業側、特に大手配車サービスのウーバーなど、多くをギグワーカーとして雇っている会社にとっては大きなコスト増となり得る。こうしたコスト増を製品・サービス価格に企業側が転嫁すれば、現在の高インフレを加速させる恐れもある。2023年に見込まれる最終案の決定までには紆余(うよ)曲折もありそうだ。

(宮野慶太)

(米国)

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