米商務次官、対中半導体輸出管理の要点説明、近くガイダンス発表

(米国、中国、日本、韓国、台湾、EU、オランダ)

ニューヨーク発

2022年10月31日

米国商務省で輸出管理を管轄するアラン・エステベス次官は10月27日、米国のシンクタンクの新米国安全保障センター(CNAS)の公開イベントに登壇し、同月7日に公表した中国向けの先端半導体などに関する新たな輸出管理規則の趣旨や要点について説明を行った(2022年10月11日記事参照)。

新たな規則は、人工知能(AI)技術に利用する先端半導体やその製造(装置を含む)、スーパーコンピュータの対中輸出の管理を主眼としている。商務省は、AI技術が中国の軍事力の増強や人権侵害に利用される懸念があることを新規則導入の理由としている。新規則の公表後には、世界の半導体関連大手が中国向けの輸出・サービスを停止するといった動きが出ている。米半導体装置メーカーのKLAは、インテルやSKハイニクスなど在中国の顧客に対する一部製品・サービスの供給を停止した(ロイター10月11日)。また、オランダの半導体装置メーカーのASMLは米国籍・永住権保有者や在米の従業員に対し、在中国の施設への新規則の対象となる半導体に関するサービスを停止するよう命じた。一方、同社のピーター・ウェニンク最高経営責任者(CEO)は新規則の内容を精査中としつつ、「オランダからのリソグラフィー装置の(対中)輸出に関するルールは変更されておらず、2023年の出荷計画に与える影響は限定的」との見方を示している(CNBCニュース10月13日、10月19日)。半導体受託製造で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は、中国の半導体スタートアップの上海壁仞智能科技有限公司(ビレン・テクノロジー)への半導体供給を停止したとされ、その影響でビレン・テクノロジーは従業員の3分の1を解雇したと報じられている(「台湾英字新聞」電子版10月27日)。

エステべス次官は新規則導入の理由について「全ては米国の国家安全保障のためで、貿易とバランスを取るものではない」としている。一方、新規則は限られた技術を対象としているため、「中国が従来レベルの半導体を製造する能力をそぐものではない」と述べた。同盟国にも同様の規則の導入を期待しており、特定の国と協議を進めていることを明かした。また、新規則が対象とする半導体製造装置については、現時点で米国でしか製造できないものが対象となっており、米国企業が外国企業との競争上不利になることはないとの見方を示した。その上で、オランダや日本の企業が対象装置を製造できるようになるまでに、多国間で輸出管理の合意が結べるよう期待しているとした。新規則について問い合わせの多い点については、近くガイダンスを発表する考えを明かした。

(磯部真一)

(米国、中国、日本、韓国、台湾、EU、オランダ)

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