脱クルマ依存「カー・ライト地区」を拡大へ

(シンガポール)

シンガポール発

2022年10月13日

シンガポール陸運庁(LTA)と住宅開発庁(HDB)は10月5日、国内6カ所について、車の利用を抑制し、公共交通機関などの利用を主軸とした街づくりを目指す「カー・ライト(car-lite)地区」に新たに指定したと発表した。6区は10月30日付でカー・ライト地区に指定される。この結果、カー・ライト地区は既存の10カ所から16カ所に拡大する。

政府は近年、車への依存を減らし、環境に優しい持続可能な都市の実現を目指して、鉄道やバスなど公共交通システムを拡充するとともに、自転車専用道路や遊歩道の整備を進めている。LTAが今回新たにカー・ライト地区に指定した6区(注1)のうち、南西部ウル・パンダン、中央部マウント・プレゼント、北西部テンガ、南部海岸沿いのケッペル・ゴルフ場跡地の4カ所は、公団住宅区域となる。ウル・パンダン地区が最も早く開発され、国内第1号のカー・ライトの公団住宅区域となる予定だ。HDBによると、ウル・パンダン公団住宅区では駐車場の設置個所を制限する一方で、公共施設のスペースを拡大。また、植樹を増やし、既存の運河を取り入れた緑と水の自然にあふれた住宅区とする。さらに、鉄道やバスなどを利用しやすくするとともに、遊歩道やサイクリング路を整備する計画だ。HDBはウル・パンダンに建設予定の公共住宅(HDBフラット)は11月から販売を予定している。

LTAはカー・ライトな街づくりの一環として、2019年2月から駐車場の設置基準を改定し、駐車場の設置個所を全体的に減らした。同庁は国内を4つのゾーンに分類し、ゾーンごとに駐車個数の設置レンジを設定した。ゾーン4のカー・ライト地区に駐車場を設置する際はその都度、同庁の承認を義務付けた(注2)。このほか、LTAは2018年2月から、乗用車と二輪車の新規登録台数の伸び率を毎年2%増からゼロ%に変更し、国内を走行する乗用車の伸びを抑えている(注3)。

(注1)カー・ライト地区に指定された6区は、南西部ウル・パンダン、中央部マウント・プレゼント、北西部テンガ、南部海岸新開発区「グレーター・サザン・ウォーターフロント」、都心部パールズ・ヒルズと、都心から南東にあるタンジョン・ルー。ケッペル・ゴルフ場跡地は、グレーター・サザン・ウォーターフロントの一部。

(注2)2019年2月から導入された駐車場の設置基準「駐車場設置範囲基準(RPPS)」の詳細は、LTAの2018年11月9日付報道発表参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

(注3)シンガポールは自動車購入の際に取得を義務付けている自動車所有権証書(COE)の発行枚数を通じて、国内の自動車の登録台数を調整している。COEの価格は毎月2回行われる入札で決定する。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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