労務管理の困難などが事業に影響、ジェトロがウクライナ進出日系企業調査

(ウクライナ、ロシア、日本)

ワルシャワ発

2022年10月26日

ジェトロは10月13日から21日にかけ、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの進出日系企業に現状況についてアンケート調査を実施した。回答企業16社のうち15社(94%)が事業に「マイナスの影響がある」と回答した。

「マイナスの影響がある」とした企業が挙げた具体的な影響(複数回答)として、スタッフの労務管理の困難(75%)、物流の混乱/停滞(63%)、ウクライナ国内での販売停滞・減少(56%)、為替レートの下落に伴うコスト増・販売価格への影響(50%)、通関現場の混乱(38%)、取引先への支払いや売掛金回収など決済の影響(38%)、対ウクライナのビジネス方針の変更(25%)、ウクライナ国内で生産するための原材料・部品の現地調達の困難(6%)、ウクライナ国内で生産するための国外からの原材料・部品調達の困難(6%)が挙がった。

このほか、2月のロシアによる侵攻当初は原材料調達や物流が混乱したが、現在は落ち着いているという声もあった。一方で、戦時下の戒厳令や徴兵によって従業員の雇用継続が困難になっている、空襲警報発令による避難のため生産効率が落ちているという回答もあった。外貨送金の困難やカントリーリスクの増大に伴う日本本社側による新規の投資やプロジェクトの停止、延期などの影響も指摘された。

対策(複数回答)としては、決済・代金回収方法の見直し(38%)が最も多く、販売先への価格転嫁(31%)、在庫の積み増し(13%)、販売先の開拓(6%)が続いた。その他の対策として、従業員への金銭面のサポート、ウクライナ国外の拠点にも生産設備を整備し、ウクライナと両方の拠点で生産を行うなどの対策を取る企業もあった。カントリーリスク回避策として、与信取引の停止や欧州域内への在庫の分散、リモートワークの導入により、ウクライナから周辺国のジョージア、ポーランド、カザフスタンに事業を展開することで対応している事例があった。

アンケート調査は、ウクライナ日本商工会の協力の下、会員企業25社とジェトロが把握するウクライナに拠点を置く日本企業3社の計28社を対象に実施し、16社から回答を得た。回答企業のうち、製造業は2社、非製造業(メーカーの販売会社を含む)は14社だった。

(石賀康之)

(ウクライナ、ロシア、日本)

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