世界銀行、2022年の東アジア・大洋州の成長率予測を3.2%に下方修正
(ASEAN、中国、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピン、カンボジア、ラオス、ミャンマー)
アジア大洋州課
2022年10月31日
世界銀行は、9月26日発表の「東アジア・太平洋地域 半期経済報告書2022年10月版」で、東アジア・太平洋地域の新興国(注)における2022年の実質GDP成長率予測を3.2%とした(添付資料表参照)。前回4月に発表された予測値(5.0%)から1.8ポイントの下方修正となった。東アジア・太平洋地域の大半の国は経済が上向く見通しとなる中、域内GDPの8割以上を占める中国経済の失速が反映されたかたちだ。
同報告書によると、2022年の中国の成長率予測は、前回の予測値(5.0%)から2.2ポイント引き下げられ、2.8%となった。世界銀行は、中国では厳格な新型コロナウイルス感染封じ込め策(ゼロコロナ政策)が続いており、経済が失速していると指摘した。
中国を除く東アジア・太平洋地域の新興国の成長率は、前回の予測値(4.8%)から0.5ポイント引き上げられ、5.3%となった。多くの国では、新型コロナウイルス感染対策措置の緩和に伴い、内需が回復している。同時に、輸出需要も伸び、成長予測を押し上げる要因となった。ASEANでは、ベトナムの成長率予測が7.2%と高く、前回の予測値(5.3%)から1.9ポイント引き上げられた。
同報告では、中国とベトナムは2020年内に新型コロナウイルス流行前の経済水準(2019年)に回復し、インドネシアとマレーシアは2021年末に同水準に到達したと説明。カンボジアとフィリピン、タイは2022年内に同水準に到達するとの見通しを示した。
世界的な景気減速、公的債務増加などに警戒
世界銀行は、世界的な景気減速の予兆も見られるとし、東アジア・太平洋地域の輸出需要が今後冷え込む可能性を指摘した。また、世界的なインフレに伴い、利上げに走る国が増えたことで、一部の新興国で資本流出や通貨下落が加速している。これにより、ラオスやモンゴルなど、対外債務の割合が大きい国で財政状況が悪化している状況に、危機感をあらわにした。
インフレなどに対する国内政策のゆがみも、リスクとして挙げた。食料価格の統制や燃料価格への補助金投入は、貧困層や中小企業よりも、富裕層や大企業への恩恵が大きいと指摘した。同時に、歳入の減少により、インフラや教育、保健分野への公的支出の減少につながりかねないとの懸念を示した。
(注)中国、モンゴル、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、パプアニューギニア、フィリピン、タイ、東ティモール、ベトナム、フィジー、キリバス、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦、ナウル、パラオ、サモア、ソロモン諸島、トンガ、ツバル、バヌアツで構成。
(庄浩充)
(ASEAN、中国、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピン、カンボジア、ラオス、ミャンマー)
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