IMF、南西アジア主要国に財政健全化を促す、財政モニター発表
(インド、パキスタン、スリランカ)
アジア大洋州課
2022年10月19日
IMFは10月12日、「財政モニター2022年10月 人々の再起を支援」を発表した。IMFは世界全体の債務は2022年にはGDP比で92%になると予測している。新型コロナウイルス感染拡大前の水準を上回るものの、多くの国で最悪時より比率は低下しているとみている。例えば、南西アジア域内でGDPに占める一般政府の総債務残高比をみると、インドは84.2%から83.4%に低下するという。
しかし、財政リスクの先行き不透明感は強い。食料・エネルギー価格は引き続き、新型コロナ前の水準を上回っている。例えば、スリランカの8月の飲食料品インフレ率は84.6%だった。パキスタンでは、同品目の9月のインフレ率は31.7%と上昇基調が続いている。そのため、各国は家計を支えるために、価格補助金や減税、現金給付などの経済政策を打ち出している。だが、政策目標を限定していないために、財政支出の効率化に問題を残している。
国際金融環境が厳しくなる中で、これまで以上に各国の予算制約は厳しくなってくる。多くの新興・途上国は2022年に資金調達コストの上昇に直面しているとIMFはみている。例えば、インドの10月17日時点の10年物国債金利は2022年初の6.5%から7.4%まで上昇している。この場合、債務残高が安定化しても、コスト上昇は利払い費の対GDP比を今後数年間にわたって拡大させることになる。またIMFは、金利上昇によって中央銀行の収益と関連した政府への配当支払いが減少すれば、政府歳入も落ち込み、さらに財政が悪化しかねないリスクに言及している。
IMFは、インフレと債務脆弱(ぜいじゃく)性に対処する上では、財政赤字の削減が必要になるという。財政健全化は、政策当局者がインフレ対策で一致しているという強力なシグナルを送ることになり、インフレ期待の係留効果(アンカリング)の維持が可能になる。その結果、債務返済コストを抑えるために必要な政策金利の引き上げ幅は小さくなるとする。また、漸進的かつ着実な財政引き締めは、政治的には難しいが、市場の信頼を失うことによって引き起こされる急激な財政収縮に比べれば混乱が少ないとIMFは分析している。
(新田浩之)
(インド、パキスタン、スリランカ)
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