ベトナム初の洋上送電線が稼働、東南アジア最長
(ベトナム)
ホーチミン発
2022年10月26日
ベトナム南部電力総公社(EVNSPC)は10月14日、南部キエンザン省キエンルオン県とフーコック島を結ぶ220キロボルト(kV)の洋上送電線建設プロジェクトの第1フェーズを完了させ、110kVの送電を開始した。同送電線は、東南アジア最長かつベトナムで初めて建設された220kVの洋上送電線となる(キエンザン省人民委員会ポータルサイト10月14日)。
同プロジェクトの総投資額は2兆2,210億ドン(約135億4,800万円、1ドン=約0.0061円)。送電線の全長は80.4キロで、全169基の送電塔が設置された。そのうち、海上区間は64.7キロで、117基の送電塔が海上の設置となる。送電塔の基礎部分には、塩害に強いプレキャスト・プレストレストコンクリート工法(PCa・PC工法)(注1)で製造された遠心成形のコンクリート杭(くい)が使用されている。また、各送電塔は、基礎面積が400平方メートル、高さ55~87メートル、設置間隔は平均560メートルあり、航空安全警告システムを備える。
EVNSPCによると、今回の送電開始により、フーコック島への電力供給の質が向上し、電力損失が減少するとともに、既存の110kV海底送電線の負荷を軽減することができる。また、同島への電力供給量能力は約5倍となり、2035年までの電力需要を満たすことができるとしている。
同プロジェクトの次のフェーズでは、22kV、110kV、220kVの異なる電圧での同時送電、フーコック島内での110kV送電線の建設、同島北部の110kV変電所の建設などを実施し、同島全域の電力網の再構築を進めていく。
フーコック市人民委員会(注2)のフイン・クアン・フン委員長は、同プロジェクトは安全保障の面だけではなく、特に観光分野における経済開発面でも重要だと強調した。フン委員長は「フーコック島の観光産業は回復しつつあり、2022年の訪問者数は300万人に達するだろう。今後も多くの開発プロジェクトが継続的に実施されるため、電力需要も年間20~23%増加する」との見通しを示した(「ティエンフォン」10月14日)。
(注1)あらかじめ工場で製造されたプレキャスト部材を、プレストレスにより圧着させて建造する工法。
(注2)フーコック島の行政区分は、2021年3月1日から「市」に格上げされた(2020年12月16日記事参照)。
(村岡一機)
(ベトナム)
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