スリランカ、主要税制改正案を公示
(スリランカ)
コロンボ発
2022年10月21日
スリランカ政府は10日11日、個人所得税・法人所得税の拡大および優遇・免除税制の廃止を含む、2017年内国歳入法第24号の改正案を公示した。本法案は、今後、議会を通過すれば法案に記載された時点にさかのぼって適用される。
主な改正案は次のとおり。
・個人所得税は、非課税対象が年間総所得300万スリランカ・ルピー(約123万円、1スリランカ・ルピー=約0.41円)未満から120万スリランカ・ルピー未満に引き下げられる。これにより、2022年10月1日以降、月間総収入が10万スリランカ・ルピー以上(年間総所得120万スリランカ・ルピー以上)の個人は、所得税の納税義務者となり、6つの区分に基づいて課税される(添付資料表参照、注1)。なお、2022年4月1日を起点とする評価対象年度の個人所得税は、前半6カ月と後半6カ月を別々に算出することになる。
・法人所得税は、2022年10月1日を起点として24%から30%に引き上げられる。特定企業に適用されてきた、所得の14%および利益の18%という優遇税制は2022年10月1日以降廃止される(注2)。
・企業が投資資産を現金化した際に適用されるキャピタルゲイン税は、2022年10月1日より10%から30%に引き上げられる。
こうした税制改正は、スリランカがIMFから支援を受けるに当たり実務者レベルで合意している、税収を強化し歳入の増加を図る経済改革の一環とみられる。スリランカ政府はIMFのプログラムを見据え、2022年10月1日から標準法人税率を24%から30%に引き上げる暫定予算案を議会に提出していた。
一方で、スリランカ国内ではこの改正案に反発の声も上がっている。野党の統一人民戦線(SJB)は記者会見を開き、本改正案はすでに税金を払っている人々にとって負担になるだろうと強調した。このほか現地メディアは、優遇税制を利用してきた、アパレル製品の輸出企業や外資系製薬企業などによる、税制改正を通じた競争環境の悪化に対する懸念を報じている。
(注1)ただし、雇用主は従業員への支払いにおいて、前払い個人所得税(APIT)を控除する。APITが差し引かれた個人による個人所得税の申告は不要。詳細は、「スリランカ 税制」の「前払い個人所得税(APIT)」の項目を参照。
(注2)優遇税制の対象企業については、「スリランカ 税制」の「法人税」の項目を参照。
(ラクナー・ワーサラゲー、大井裕貴)
(スリランカ)
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