トラス英首相が電撃的に辞意表明、保守党の新党首は10月28日までに決定

英国のエリザベス・トラス首相は10月20日、首相官邸で会見を開き辞意を表明した。就任から約1カ月半、英国首相としては史上最短となる見込みだ。

トラス首相は会見で、家庭や企業へのエネルギー価格高騰の影響や、ロシアのウクライナ侵攻による安全保障への脅威、英国の経済成長の停滞という状況を変えるために与党・保守党から委任されたものの、現状ではそれを実行することができないとした。

9月23日にクワシ・クワルテング財務相（当時）が発表した経済対策「成長計画」は市場の混乱を招き、所得税の最高税率引き下げや法人税の増税中止の相次ぐ撤回を余儀なくされた。さらに、解任されたクワルテング氏に代わって財務相に就任したジェレミー・ハント氏はそのほかの税制措置もほぼ全て撤回（2022年10月18日記事参照）。19日にはスエラ・ブレイバマン内務相が辞任を表明した（2022年10月20日記事参照）ほか、フラッキング（注1）禁止法案への投票を巡って保守党議員間で騒動が起こるなど、混乱が報じられており、党内からも辞任を求める声が高まっていた。

トラス首相は、会見に先立って1922年委員会のグラハム・ブレイディ委員長と会談し、10月28日までに保守党の党首選をすることで合意したと会見で述べた。党首選の流れは以下のとおり（英国議会サイト）。

• 10月24日午後2時までに保守党議員100人の推薦を受けて立候補。
• 候補者が1人の場合は、党員による投票は行わず、24日に新党首が決定。
• 2人以上の場合、2人まで絞られた段階で保守党議員による示唆的投票（注2）を行ったうえで保守党員によるオンライン投票を行い28日に新党首を決定。なお候補者が3人の場合は、この前に保守党議員による投票を行い2人に絞る。

報道では、次期党首候補として、前回の党首選の決選投票でトラス首相に敗れたリシ・スーナック元財務相や、ペニー・モーダント下院（庶民院）院内総務・枢密院議長、ケミ・バデノック国際通商相、ブレイバマン前内務相などのほか、ボリス・ジョンソン前首相の名前も挙がっている。ハント財務相はスカイニュースの取材に対し、党首選への立候補の可能性を否定している（「スカイニュース」10月20日）。

（注1）化学物質を含む高圧水を使用したシェールガス・オイルの採掘方法。

（注2）各議員の選好を示すために行われる投票で、拘束力を持たない。

（山田恭之）