第15回総選挙は11月19日に実施、経済への影響は軽微との見方

(マレーシア)

クアラルンプール発

2022年10月24日

10月20日に開催されたマレーシアの選挙管理委員会(EC)で、第15回総選挙の投票を11月19日に実施、即日開票することが決定した。10月10日に、イスマイル・サブリ首相が連邦下院(定数222、任期5年)の解散を発表していた(2022年10月12日記事参照)。公示日は11月5日とし、同15日に期日前投票を開始する。選挙権年齢が21歳から18歳に引き下げられてから初の総選挙で、有権者数は2,117万人だ。

現政権は、複数政党の連立により辛うじて下院の過半数を保っている。シンガポール国際情勢研究所アナリストのオー・エイ・スン氏ら複数のアナリストは、再び連立が組まれると見るものの、政党間の組み合わせは見通しづらく、盤石な政権が樹立されるかどうかは不透明だ(マレーシア・ナウ10月15日)。

翻って総選挙の国内経済への影響について、エコノミストの間では、外的要因の方が大きく、総選挙結果そのものが及ぼす波及効果は大きくないとの見方が多い。例えば、サンウェー大学経済学部のヤー・キムレン教授は「政情不安を理由として一部の投資プロジェクトが保留される可能性はあるが、2022年の経済成長に大きな影響は与えない」と指摘する。2023年については、ウクライナ情勢の緊迫化や高インフレ、金融引き締めによる景気鈍化といった、世界情勢の悪化がむしろ足かせとなり、同年のマレーシアの経済成長率は約4%にとどまると見通している。もし総選挙後に安定政権が樹立されれば、同年の成長率を押し上げる可能性もあるとした。他方で、2023年以降の成長率を4~5%以上に維持できるかどうかは、政府の構造改革次第だとも付け加えた。

地場シンクタンク、アムバンク・リサーチのチーフエコノミストであるアントニー・ダス氏は、総選挙による不確実性が、長ければ2023年第1四半期までの下振れリスクの1つになり得るとしつつ、上記で指摘された地政学リスク、生活コストの上昇、リンギ安、外国人労働力の不足といった他の諸問題も山積している、と述べた。シンガポールのオーバーシー・チャイニーズ銀行(OCBC)のエコノミスト、ウェリアン・ウィラント氏も「選挙が明確な結果を出せば市場から好感される」「マクロ経済の安定に資する」としつつ、短期的にはGDP見通しを左右するものではないと指摘した(スター10月17日)。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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