欧州委、エネルギー部門のデジタル化計画で「グリーン×デジタル」推進

(EU)

ブリュッセル発

2022年10月20日

欧州委員会は1018日、「エネルギー部門のデジタル化行動計画外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」と題する政策文書を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EUは、ロシアからのエネルギー依存脱却計画「リパワーEU」(2022年5月20日記事参照)の中で、2030年のエネルギーミックスに占める再生可能エネルギー比率目標45%を掲げるなど、グリーン化を加速させている。欧州委は、こうした目的を達成するには、デジタルツールを一層活用したスマートなエネルギーシステムの構築が必要とし、本計画でそのための方向性を示している。

欧州エネルギー・データ空間の実現を柱に

行動計画ではまず、エネルギー部門に関するデータの利用や共有のための欧州エネルギー・データ空間の運用を2024年中に開始するとしている。欧州エネルギー・データ空間は、20202月に欧州委が発表したデータ戦略(注)の中で示された構想の1つだ。同構想に基づき、電気自動車(EV)からの電力供給を可能とするEVの双方向充電や、ヒートポンプを活用したスマート建物・暖房など、デジタル化によってエネルギーを機動的に活用できる技術を推進することで、電力グリッド運用の柔軟性を高めることが期待できるという。こうした取り組みを通じて、消費者にとっても自家用太陽光発電での余剰電力の売電や、価格ピーク時にはEVバッテリーからの電力を活用するなど、電力コストに対する自律性を高められるメリットがあるとした。また、EU域内で協調したデータ空間を創出するために、欧州委は全加盟国が参加するスマートエネルギー専門家グループを編成する。

行動計画では、デジタルインフラ自体の省電力化も優先課題に挙げている。情報通信技術部門は総電力消費の約7%を占めるが、2030年には13%まで高まるとし、通信ネットワークインフラや、データセンター、ブロックチェーンシステムなど電力消費の大きい部門のエネルギー効率改善が不可欠だとしている。取り組みの一例として、エコデザイン規則案(2022年4月4日記事参照)が示した持続可能な製品政策枠組みに基づき、欧州委はコンピュータを対象としたエネルギーラベル制度を開発し、エネルギー消費の抑制を図る。同様の制度をデータセンターやブロックチェーンについても検討していく。

また、エネルギーシステムのデジタル化にはサイバーセキュリティーの強化が不可欠なことから、欧州委は同じく1018日に提案した「重要なインフラの強靭(きょうじん)化のための協調的アプローチに関する勧告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の中で、エネルギーインフラへのサイバー攻撃などへの備えを高めていくべきとし、加盟国に求められる対策をまとめている。

(注)データ戦略に関しては、ジェトロ調査レポート「EUデジタル政策の最新概要PDFファイル(1.8MB)」を参照。

(安田啓)

(EU)

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