米金融安定監視評議会、デジタル資産規制の法制化に関する提言など含む報告書を公表

(米国)

米州課

2022年10月05日

米国金融規制当局などで構成される金融安定監視評議会(FSOC)は10月3日、暗号資産などデジタル資産の安定的な金融システムに対するリスクと規制に関する報告書を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。本報告書は、ジョー・バイデン大統領が2022年3月に署名した、暗号資産の研究開発の加速に関する大統領令に対応したものとなる(2022年3月10日記事参照)。

本報告書では、暗号資産活動について、暗号資産の多くが基本的なリスク管理をできないことや、資産価値が投機的な投資によって左右されており、価格変動が大きく記録的な下落を繰り返してきたことなどの脆弱(ぜいじゃく)性を指摘した。また、これらの脆弱性は、暗号資産発行事業者などの市場参加者が、適切な管理や効果的なガバナンスなどの金融システムの安定性に関するリスクに対処するために可能な措置を講じないことが一因とし、暗号資産活動が米国金融システムの安定性にリスクをもたらす可能性があると指摘している。

また、暗号資産発行事業者によって違法な取引が数多く行われ、過去数年間、規制当局が数多くの執行措置で対処してきた状況を分析している。一方で、本報告書では、現在は有価証券でない暗号資産に対する連邦の規制は限られているため、取引の秩序や透明性が確保されず、投資家や消費者などが広く保護されていないと指摘した。さらに、暗号資産ビジネスには包括的で一貫性のある規制枠組みがなく、暗号資産会社の中には関連会社や子会社が別の規制の枠組みのもとにある場合もあるため、単一の規制当局が、暗号資産ビジネス全体を俯瞰(ふかん)してリスクを可視化できていないことなどを課題として挙げた。

FSOCは、暗号資産エコシステムの大部分は従来の規制や規則でカバーされており、これらを継続していくことの重要性を強調する一方、報告書で指摘された課題に対応するために、有価証券でない暗号資産を規制する権限を連邦金融規制当局に与える法律を整備し、規制当局が、暗号資産会社の関連会社や子会社も含めた全ての活動を監督する権限を付与すること、さらには委員会自体の暗号資産活動に関するデータ分析・監視能力の強化などを提言した。

FSOCの議長を務めるジャネット・イエレン財務長官は、本報告書について「デジタル資産が持つ潜在的な利益を実現しつつ、政策立案者であるわれわれがデジタル資産のリスク軽減に向けて取り組むための強固な基盤となる」とコメントしている。

(石黒義人)

(米国)

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