共産党代表大会報告、科学技術・人材などを重視

(中国)

中国北アジア課

2022年10月24日

中国共産党の第20回全国代表大会(注)が10月16日に北京市で開幕し、習近平総書記(国家主席)が党中央委員会を代表して報告を行った(2022年10月18日記事参照)。報告は共産党と政府が展開してきた既存路線を踏襲したもので、長期的な数値目標は盛り込まれなかった。

党大会報告を基に幾つかの分野を抽出・整理して、主な概要をみてみる(添付資料表参照)。今後については、質の高い発展は社会主義現代化国家の全面的な建設の第1の任務としており、発展の質向上を引き続き最重視している。今後5年間を社会主義現代化国家の全面的建設をスタートさせる肝心な時期と位置づけた。

科学教育興国・人材分野は今回新たに独立した章立てで取り上げた。科学技術を第1の生産力、人材を第1の資源、イノベーションを第1の原動力とすることを堅持するとしたほか、教育の優先発展や科学技術の自立自強、人材による牽引・駆動を堅持し、教育強国、科学技術強国、人材強国の建設を加速するとした。国連の「世界人口推計2022」の中位推計では、2022年に中国の人口が減少したとしているが(2022年9月27日付地域・分析レポート参照)、今後の安定成長を見据えた全要素生産性の向上のためにも、科学技術やイノベーションの向上や人材育成が不可欠と考えているとみられる。

国家安全保障も独立した章立てにした。国家安全保障の法治体系や戦略体系、政策体系、リスクモニタリング・早期警報体系、国家緊急対応管理体系を整えるとしたほか、政権の安全や制度の安全、イデオロギーの安全を断固として守り、食糧、エネルギー資源、重要産業チェーンサプライチェーンの安全を確保するとした。昨今の国際情勢を踏まえた備えや新型コロナウイルス感染拡大によって起こりうる物流寸断を想定したものとみられる。

グリーン発展については、産業構造調整や汚染対策、環境保護、気候変動対策を統一的に進め、炭素排出削減や汚染対策、緑化、成長をともに推進するとしたほか、積極的かつ確かなカーボンニュートラル、カーボンピークアウトの推進は中国のエネルギー賦存に立脚し、計画をもって段階を分けて実施するとした。さらに、エネルギー革命を深化させ、石炭のクリーン・高効率利用を強化するとした。2021年に複数の省で電力の使用制限措置が取られたことなどを踏まえ、石炭を主要なエネルギー源としている国情にも配慮しつつ、炭素排出削減を進める方向とみられる。

(注)全国代表大会は近年、5年に1度開催されており、党指導部となる中央委員会の選出や、前回大会からの業務総括報告などが行われる。閉幕後に中央委員会第1回全体会議を開催し、共産党トップの中央委員会総書記などを選出する。習近平総書記は2012年11月の第18回全国代表大会の終了翌日の第1回全体会議で選出された。

(宗金建志)

(中国)

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