ルクセンブルク政府、アルセロール・ミタルと脱炭素技術への投資計画で覚書を締結

(ルクセンブルク)

ブリュッセル発

2022年10月03日

ルクセンブルク経済省は9月27日、鉄鋼大手アルセロール・ミタル(本社:ルクセンブルク)と脱炭素技術への投資支援に関する覚書を締結したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。アルセロール・ミタルは、ルクセンブルクの鉄鋼生産拠点で、カーボンニュートラル・スチール(注1)の生産に向けた開発プロジェクトを予定している。同覚書により、ルクセンブルク政府は、同社の戦略的な投資に対し、財政的な支援を行う。

プロジェクトの第1段階として、アルセロール・ミタルは、約1億ユーロを投じて、ルクセンブルク南西部のベルバル製鉄所の高炉を電気炉設備(EAF)に転換する。この投資により、エネルギー効率を高め、鉄鋼の生産能力を約15%増加させ、年間250万トンまで拡大させることで、国内の鉄鋼生産能力の自給自足を確立し、圧延製品(注2)の需要に対応する。残存するカーボンフットプリントは、圧延機の再加熱炉の熱源を、天然ガスから代替エネルギーに置き換えるなどの技術を取り入れることで削減を目指す。

第2段階として、中部ビッセンの生産拠点のカーボンニュートラルを目指し、最新技術を導入して伸線と亜鉛メッキの加工ラインの近代化を図る。既に実行可能性調査を開始しており、その結果に応じて、プロジェクトを進める。今後5年間で約3,000万ユーロ規模の投資を見込む。

最終段階として、生産プロセスや製品・アプリケーション開発における脱炭素化を担う、現在、南西部エシュ=シュル=アルゼットにある研究開発(R&D)センターをベルバルに移転させる。R&D拠点を生産拠点内に統合することで、R&D機能を強化するとともに、近隣のルクセンブルク大学やルクセンブルク科学技術研究所(LIST)との交流を図り、イノベーション・クラスターの形成を目指す。

フランツ・ファイヨ経済相は「これらの投資計画は、気候変動に対する政府の優先事項に沿ったものであり、環境に寄与するだけでなく、イノベーションの最前線にある工業地域として名高いルクセンブルクの評判を高めることにつながる」と評価した。

アルセロール・ミタルは、鉄鋼事業の脱炭素化に向けた取り組みをベルギーでも発表(2021年10月5日記事参照)しており、2030年までに二酸化炭素(CO2)排出量を35%削減する目標を掲げている。

(注1)生産プロセスにおいて、二酸化炭素(CO2)排出量が実質ゼロとなる鉄鋼(スチール)。

(注2)アルミニウムの塊に圧力をかけて薄く加工した製品。

(大中登紀子)

(ルクセンブルク)

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