バイデン米政権、オピオイド対策に15億ドルの資金拠出表明

(米国)

ニューヨーク発

2022年10月04日

米国のバイデン政権は9月23日、医療用麻薬の「オピオイド」対策として各州に15億ドルの助成金を拠出すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

米国では、比較的容易に入手できる鎮痛剤オピオイドなどの薬物過剰摂取による死亡が主な死因の1つとなっており、議会予算局によると、2000 年以降50万人以上がオピオイド関連の薬物過剰摂取で死亡している。国立衛生統計センター(NCHS)によると、「不慮の事故」の半分を薬物過剰摂取が占める(2022年9月2日記事参照)。また、新型コロナウイルス禍の中で、オピオイドの過剰摂取による死亡は全国的に増えている(2022年8月29日記事参照)。米国疾病管理予防センター(CDC)によると、2021 年に 10万7,000 人以上の薬物過剰摂取による死亡があり、前年比で 約15%増加した。11月に中間選挙が迫る中、バイデン政権はこうした現状を受けて対策を打ち出し、国民にアピールしたかたちだ。

具体的な対策の中身については、薬物中毒者に対する回復支援サービスや救急部門の専門家増員などの体制整備のほか、薬物過剰摂取についての教育プログラムなどに充てるとしている。薬物取り締まり対策としては、各執行機関の体制拡充について、4月に既に2億7,500万ドルを拠出しているが、今回新たに1,200万ドルを追加支出する。また、財務省がオピオイド関連の麻薬密売に関連した国際的な不正取引に新たに制裁を科したことも今回明らかにした。

オピオイド過剰摂取による経済損失はCDCの試算では2017年時点で1兆200億ドル、上院の報告書によると、直近の2020年に1兆5,000億ドルに達しているとみられている。こうした現状から、過去数度の対策予算が編成され、2017 年度から 2023 年度までに本予算以外に年間約 7 億ドルから16億ドルの追加予算が計上されたが、オピオイド過剰摂取による死亡に歯止めがかからないのが現状だ。9月30日に2023年度本予算成立までのつなぎ予算が成立し(2022年10月3日記事参照)、議会は今後、本予算の審議に移っていくが、薬物取り締まりプログラムの関係機関向け予算として前年度比32億ドル増の425億ドルが本予算に計上されている。今回の対策を含め、本予算に盛り込まれたオピオイド対策が今後どのように扱われ、米国でのオピオイド過剰摂取状況が改善していくかが注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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