英政府、スト中の交通機関の運行を確保する法案を発表

(英国)

ロンドン発

2022年10月24日

英国政府は10月20日、交通機関のストライキ中も運行を最低限確保するための新法案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます議会に同日に提出することを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同法案は、9月23日に政府が発表した経済対策(2022年9月26日記事参照)の政策の1つ。2023年中にイングランド、ウェールズ、スコットランドの交通機関に対し、施行される予定。

同法案は、交通機関の組合がストライキを実施する際に、鉄道、地下鉄、バスなどの交通サービスの交通サービスが完全に停止しないようにするもの。

英国では、賃金が生活費の上昇に追いついておらず、賃上げを求めて多くの産業でストライキが実施されている。政府は、2022年6月に行われた鉄道ストライキによる経済損失は約1億ポンド(約169億円、1ポンド=約169円)と推計されるとした。

法案には以下の内容が盛り込まれている。

  • ストライキ中も、交通機関については最低限のサービス水準を確保しなければならない。水準に満たない場合、労働組合は損害(賠償)に対する法的保護を失う。
  • 交通機関の雇用者は、ストライキ中に適切なサービス水準を満たすために必要な労働力を特定し、労働組合はストライキ中も適切な人数の労働者を確保する措置を講じなければならない。
  • 特定された(働くことを求められた)にもかかわらずストライキを継続する労働者は、不当解雇に対する保護を失う。

最低サービス水準は、雇用主と労働組合で交渉し合意するとしている。一定期間の間に合意に至らなかった場合は、中央仲裁委員会が最低サービス水準を決定するとしている。

交通サービスへの最低サービス水準の適用方法については、今後、意見公募を行ったうえで、2次立法で制定するとしている。

これに対し、全国鉄道・海運・運輸労働組合 (RMT)は労働者の権利を法的に阻害する「独裁的な」反労働組合的な法案だと非難外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。RMTのミック・リンチ書記長は鉄道業界での効果的かつ合法的な労働者の争議行為を違法化するものだとして、受け入れられないとコメントしている。

RMTは10月18日、鉄道事業者ネットワークレールとの交渉につき、企業側が賃金改善の取り決めの破棄などを行ったとして、11月に3日間のストライキを実施することを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。

(島村英莉)

(英国)

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