ADB、パキスタンの2023年度の経済見通しを下方修正

(パキスタン)

アジア大洋州課

2022年10月05日

アジア開発銀行(ADB)は921日、「アジア経済見通し2022年改PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した。パキスタンの2022年度(20217月~20226月)の経済見通しは、4月予測の4.0%から、今回は6.0%に上方修正した。しかし、政府が財政再建のための歳出抑制と対外不均衡解消に向けた金融引き締め政策に力点を置くことで、2023年度(20227月~20236月)の経済成長率は4.5%から3.5%に下方修正した。これらの金融・財政政策は需要を抑制する。加えて、現在の通貨パキスタン・ルピー安は輸入コストを上昇させ、企業活動を委縮させるとADBは分析している。

ADB4月の政権交代につながった理由の1つに挙げられるインフレ率について、2022年度は4月予測の11.0%から12.2%に引き上げ、2023年度予測も8.5%から18.0%に上振れした。パキスタン政府が債務危機回避のために緊縮予算を迫られている結果、増税や小麦の統制価格と電力料金の引き上げに加えて、パキスタン・ルピーの減価がインフレ率を押し上げると分析している。直近のパキスタンのインフレ率は8月時点では27.3%だ。また、103日時点の対ドル相場は1ドル=229.5パキスタン・ルピーと、2022年初から23.0%下落した。

ADBはパキスタンの中期的な見通しについて、政治的安定性の回復と経済的な安定のために、IMFのプログラムを着実に履行することが重要と指摘する。4月に退任に追い込まれたイムラン・カーン前首相の人気は依然高く、現政権と対立の火種はくすぶっている。ADBは、経済を回復軌道に乗せるためには、特に外部からの資金調達を実現できるかにあるとする。現在の厳しい政治・経済情勢下で、6月から被害が拡大した水害・洪水問題は経済に潜在的な悪影響を与え、インフレ率の先行きも厳しく見通さざるを得なくなる。また、総選挙実施の場合、財政のタガが緩まないかもリスク要因とADBは指摘する。

(新田浩之)

(パキスタン)

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