TSMC、2023年上半期までの半導体業界の在庫調整継続を予想も、引き続き増収見込む

(台湾、米国)

中国北アジア課

2022年10月18日

半導体受託製造(ファウンドリー)の世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は10月13日、2022年第3四半期(7~9月期)の業績説明会を開催し、同期の売上高が前期比で11.4%増、前年同期比で35.9%増の202億3,000万ドルだったと発表した。

魏哲家最高経営責任者(CEO)は増収の背景について「最先端の『5ナノ』半導体に対する力強い需要に支えられた」と説明。売上高全体に占める「5ナノ」の割合は28%を占め、前年同期(18%)から10ポイント上昇した。一方で「7ナノ」の割合は26%と、前年同期(34%)から8ポイント低下した。

2022年通年の設備投資額は約360億ドルを予定するとし、7月14日の第2四半期(4~6月)の業績説明会で示した見通し(約400億ドル、注)から、約1割下方修正した。スマートフォンやパソコンなどの末端市場の需要の弱さに加え、顧客の製品スケジュールの遅れにより、「7ナノ」と「6ナノ」の設備投資計画を調整したと説明した。

半導体サプライチェーンの在庫水準について、魏CEOは「2022年第3四半期にピークを迎え、第4四半期(10~12月)には減少に向かう」としつつ、「健全な水準に至るまでの在庫調整期は2023年上半期まで続く」との見方を示した。

2022年第4四半期の業績の見通しは「横ばい」と予測。顧客の在庫調整による影響を受ける一方で、スマートフォンや、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)向けの「5ナノ」半導体の需要増が継続すると指摘した。2022年通年では、30%台半ばの伸び率(ドルベースによる、以下同)を予測した。

2023年の見通しについて、魏CEOは、半導体業界全体として「衰退」局面を予想。在庫調整によって同社の稼働率も同年上半期に影響を受けるだろうとした。一方で、同社としては2023年も増収を見込んでおり、今後数年間は15~20%の伸びを期待できると表明。今後の計画に関し、次世代の「3ナノ」を2022年第4四半期後半に、「3ナノ」の高性能版「ポスト3ナノ」を2023年下半期に、それぞれ量産化を予定していると紹介した。うち「3ナノ」の2023年の売上高は、「5ナノ」の販売初年度(2020年)の売上高を超え、2023年の業績全体に貢献するとの見方を示した。

米国による新たな輸出管理措置による影響は「限定的」と言及

2022年第3四半期の国・地域別売上高の構成比は、北米が72%を占め(前年同期比7ポイント上昇)、中国は8%(同3ポイント低下)、日本は5%(前年同期から変動なし)だった。

米国が10月7日に発表した半導体関連製品に関する新たな輸出管理強化措置(2022年10月11日記事参照)による影響について、魏CEOは説明会参加者の質問に答えるかたちで言及。「新たな措置は、非常にハイエンドな仕様に対して管理を強化するものであり、当社への影響は限定的で、コントロール可能な範囲だ」と評価した。

(注)同社は2022年1月13日に開催した2021年第4四半期(10~12月)の業績説明会で、2023年の設備投資額の見通しを約400億~440億ドルと公表。2023年第2四半期の業績説明会では、予測値の下限(約400億ドル)に近づくとの見通しを示していた。

(小林伶)

(台湾、米国)

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