減税措置の延長などエネルギー価格高騰への対策を発表

(ベルギー、EU)

ブリュッセル発

2022年09月02日

ベルギー連邦政府は8月31日、エネルギー価格の急激な上昇が続く中、企業と家計に与える影響を緩和するための6つの政策を発表(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。主な内容は以下のとおり。

  1. 消費電力の削減:企業、一般家庭、官公庁全体で省エネを推進し、ガスや電力の使用量を削減する。その一環として、連邦政府の建物の冷暖房の設定温度をそれぞれ27度と19度とし、照明を午後7時から午前6時まで消灯する。
  2. 国民向けの支援:既に実施されているガソリンと軽油に対する特別物品税の軽減措置や、電気・ガスにかかる付加価値税(基本税率:21%)税率を6%にする減税措置(2022年3月22日記事参照)を2023年3月31日まで延長する。
  3. 銀行による支援:エネルギー価格高騰の影響を大きく受けた家計を対象に、住宅ローンの返済猶予を銀行と協議する。また、省エネ対策につながる金融商品の開発を促す。
  4. 企業向け支援:欧州委員会が提案した加盟国単位でのエネルギー市場への介入策(2022年5月24日記事参照)の実施について、各地域政府と協議する(注)。
  5. 省エネ対策につながる投資の促進:建物の解体や改築にかかる付加価値税率を6%に減税する措置を2023年末まで延長する。なお、築10年未満の住宅を対象とした、太陽光発電パネル、ソーラーボイラー(太陽熱温水器)、ヒートポンプへの投資にかかる付加価値税率を6%に減税する措置も、2023年末を期限として実施済み。
  6. エネルギー企業の超過利潤への対応:エネルギー部門における公平な競争条件を確保しつつも、エネルギー価格の高騰により過剰な利益を得ているエネルギー事業者に対する課税を検討し、必要な措置を講じる。

連邦政府のアレクサンドル・ド・クロー首相は、エネルギー価格の高騰による影響に懸念を示しつつも、ベルギーにおけるガスの備蓄水準は既に80%を超えており、欧州委が課した備蓄計画(2022年3月24日記事参照)を1カ月以上前倒しで達成していると指摘。電力に関しても、発電施設の点検・整備を今冬から来春に延期することや、2023年3月末に廃炉が決定している原子力発電所「ティアンジュ2」の廃炉の延期を検討することを発電事業者に要請しており、最大限の発電容量を確保するための措置を講じているとした。

ド・クロー首相は、これらの政策により、ベルギーは落ち着いて冬を越せるとし、厳冬にならなければ、自国ではエネルギーが余るので、近隣諸国にエネルギーを提供することもできるとした。一方で、欧州における現在の電力とガスの卸売価格は、他の地域と比較して不合理に高く、市場介入が必要な水準に達しているとした。そのためベルギーは、EUレベルでのガス価格の上限設定と、電力料金設定の見直しを主張しており、欧州委が提案した電力価格の緊急介入策(2022年8月31日記事参照)を歓迎すると述べた。

(注)ベルギーは連邦制を採用しており、企業支援は地域政府(ブリュッセル首都圏地域、ワロン地域、フランダース地域)の管轄となる。

(大中登紀子)

(ベルギー、EU)

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