カナダ政府、国連の新疆ウイグル自治区人権レポートを支持する声明を発表

(カナダ、中国、米国)

米州課

2022年09月05日

カナダ政府のメラニー・ジョリー外相は91日、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が831日に公表した中国の新疆ウイグル自治区における人権をめぐる状況に関する報告書を支持する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。

ジョリー外相は、強く待望されていた同報告書が公開されたことは非常に重要なことで、「新疆で発生している深刻で組織的な人権侵害と違反についての証拠を集積する上で重要な貢献をしている」と評した。ジョリー外相は、報告書は、ウイグル族やその他のイスラム教少数民族の恣意(しい)的かつ差別的な拘留は、国際犯罪、特に人道に対する罪となる可能性があると判断したものとしている。

また、カナダは、現在進行中の重大かつ組織的な人権侵害について、重大な懸念を繰り返し表明してきたとして、「続々と現れる証拠は、中国政府当局の主導による組織的な人権侵害を裏付けている。これらの証拠には、100万人を超えるウイグル族やその他のイスラム教少数民族の宗教や民族性に基づく大規模かつ恣意的な拘留や、広範な大規模監視、政治的再教育、性的暴力、強制労働、拷問、強制不妊手術などが含まれている」と述べた。

ジョリー外相は、中国政府とは2022年初めの会談を含め、政府間のトップレベルで直接対話をしてきたことについて触れたほか、諸外国との協力に関して、ファイブ・アイズの同盟国、G7、国連人権理事会といった国際的なパートナーと協力して、強制労働により生産された商品がカナダおよび世界のサプライチェーンに入り込むリスクに対処するために取り組んでいる点について触れた。

声明では、「カナダは中国政府に対し、国際的な人権上の義務を守り、OHCHR報告書で提起さ​​れた懸念と勧告に対応するよう要請する。新疆ウイグル自治区の状況に対処し、中国政府がその行動の責任を問われることを確実にするために、国際的なパートナーと協力して協調行動を取り続ける」と締めくくられている。

カナダでは、関税定率法136条で強制労働により製造等された品目の輸入を禁止しているが、20207月には対象品目に「全体または一部が強制労働によって採掘、製造または生産された物品」が追加された。また、202111月には「サプライチェーンにおける強制労働および児童労働との闘いに関する法律を制定し、関税率を改正する法案(S-211)」および、中国の新疆ウイグル自治区で生産された物品の輸入を禁止する「新疆からの物品に対する関税率を改正する法案(S-204)」が上院に提出され(2021年11月26日記事参照)、それぞれ上下院での審議が続いている。

なお、OHCHR報告書に対しては、米国政府も9月1日に歓迎・支持する声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている(2022年9月5日記事参照)。

(高山さわ)

(カナダ、中国、米国)

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