EU理事会、エネルギー価格高騰への介入策の必要性で一致、9月末までの合意を目指す

(EU)

ブリュッセル発

2022年09月12日

EU理事会(閣僚理事会)は99日、エネルギー担当相の臨時会合をブリュッセルで開催し、高騰するエネルギー価格の家計や企業への影響を緩和するために、短期的な緊急介入策が必要だという点で合意した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州委員会は、既に緊急介入策を提案する意向を示しており(2022年8月31日記事参照)、97日には介入策の概要外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表していた。EU理事会は今回の会合で、欧州委が検討する介入策を議論した上で、介入策の在り方に関して共通の方向性を定めることができたとした。現時点では、介入策の詳細は明らかにされていないが、欧州委は913日にも、介入策に関する法案を正式に提案する予定だ。EU理事会は、法案の発表後にさらなる審議を進め、9月末までに合意を目指すとしている。

欧州委が検討しているのは、以下のとおり。

  • 電力需要の削減策:欧州委は、加盟国を対象として、電力需要ピーク時の消費に対して義務的な削減目標を課すことを検討している。ただし、EU理事会は、ガス需要削減規則(2022年8月9日記事参照)と同様に、自主的な削減を求める段階と義務的な削減目標を課す段階の2段階からなる措置を想定しているとした。
  • エネルギー事業者の超過利潤に対する措置:EUでは、電力価格は実質的にガス価格に連動していることから、ガス価格の高騰により電力価格も高騰している。一方で、再生可能エネルギーによる発電コストは、現状ではガス火力発電のコストより大幅に低く、再生可能エネルギーを利用した発電事業者は予想をはるかに超える利益を得ている。そこで、欧州委は、再生可能エネルギーを利用した発電など、低いコストで発電している事業者の収入に対して上限を設定する。また、石油やガスなどの化石燃料の事業者も多額の利益を得ていることから、これらの事業者には「連帯負担金」を課す。その上で、加盟国はこれらの歳入を、エネルギー価格高騰の影響を受ける家計や中小企業の支援、産業界の電化、再生可能エネルギーへの投資に充てる。
  • ガス価格の上限設定:欧州委は、ロシア産天然ガスへの上限価格の設定を検討している。一方で、一部の加盟国は、液化天然ガス(LNG)を含む、EUが輸入するガス全体に対する上限価格の設定を検討すべきとしている。ただし、欧州委は、LNGへの上限価格の導入は、他国との間でLNGの獲得競争が起きていることから、EUのエネルギーの安定供給を脅かしかねないとして、消極的な立場を示した。なお、ロシア産天然ガスのみに上限価格を設定した場合、EUのガス価格を引き下げる効果は限定的とみられており、目的はむしろロシアの天然ガス収入を減らすことにあるとしている。また、この場合、ロシアは対抗措置としてEUへの天然ガスの供給を完全に停止する可能性があることから、欧州委は、ロシア産天然ガスに強く依存しており、代替供給元の確保に難航している加盟国を中心に協議を続けるとした。
  • 流動性対策:流動性が低下しているエネルギー企業などへの支援策として、政府保証による国家補助をより柔軟に認めるために、暫定危機対応枠組み(2022年7月13日記事参照)を改定する。

(吉沼啓介)

(EU)

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