政府、クラウドを活用した産業データのセキュリティー強化を促進

(フランス)

パリ発

2022年09月22日

フランスのクラウド最大手OVHクラウドのデータセンター開設式のため、ストラスブールを訪問したブリュノ・ル・メール経済・財務・産業デジタル主権相は9月12日、フランスのデジタル主権確立のため、行政機関や民間企業にクラウドの活用を通じたデータのセキュリティー強化を促した(同相のクラウドのための国家戦略に関する演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同相は、企業が自発的に強化しない場合、産業主権や独立の保護のため、機密性の高いデータのセキュリティー強化に向けた強制規格の導入もあり得ると言及した。

具体的には、機密性の高いデータを「SecNumCloudビザ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の認証ラベルを取得しているクラウドに保管するよう求める。このために、政府は数週間以内に「機密性の高いデータ」の基準を定めた通達を出す予定だ。

SecNumCloudビザは、国立情報システム・セキュリティー庁(ANSSI)が信頼できるセキュリティー基準を満たすと認めたクラウドサービスプロバイダーに与える認証ラベル。SecNumCloudビザは、認定したプロバイダーやそれらが処理するデータがEU域外の法律の対象とならぬよう、対象企業を本社がEU域内にある企業に限定している。

政府は2021年5月、経済復興策の一環として18億ユーロを充て、フランスにおけるクラウドのエコシステムを支援する「クラウドのための国家戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を開始。以来、同認証ラベルの取得促進を強化しており、OVHクラウドなど5社の7つのクラウドサービスが取得した。政府は、手続きが複雑で費用が高いことが取得の障壁となっているとして、スタートアップや中小企業が同ラベルを容易に取得できるよう250万ユーロを支援する措置を立ち上げるとした。また、デジタル分野における産業界と政府の対話を促進するため、「信頼されるデジタル」分野の戦略委員会を設立予定であることも発表された(経済・財務・産業デジタル主権省の9月12日付発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

前述の国家戦略によると、欧州のクラウド市場は、2020年の530億ユーロから2030年には5,600億ユーロの市場に成長する見込みだ。

ル・メール氏は「データの支配は経済的繁栄につながる。データを流出させる者は、自分たちの繁栄・主権・独立を流出させる。従って各人が、それが重要であるという認識を持たなければならない」とし、「(米国企業のクラウドに保管されている場合)われわれの主権と独立に不可欠なデータを米国の司法当局が押収できるということは受け入れられない」と述べた。

(奥山直子)

(フランス)

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