バイデン米政権、国内飢餓対策などに官民で80億ドル以上の拠出を表明

(米国)

ニューヨーク発

2022年09月30日

米国バイデン政権は9月28日、国内の飢餓撲滅や食に関する病気を減らすための対策会議を開催し、官民合わせて80億ドル以上を拠出すると表明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。米国では、2021年に約10%の家庭が経済的理由などから食料不足を経験し、さらに子供がいる食料不足の家庭割合は新型コロナ禍の2020年に14.8%と前年から1.2ポイント上昇するなど、飢餓問題が深刻化している。今回の対策会議は、2030年までにこうした問題の解決を目指す狙いがある。

会議には政府高官に加え、ニューヨーク市のエリック・アダムス市長らも参加し、非営利団体や医療団体、グーグルやドアダッシュなど複数の民間企業が、会議で制定された対策への参加を表明した。具体的な対策の柱として、(1)食料アクセスと価格の改善、(2)栄養と健康の統合管理、(3)健康的な選択をするための消費者支援、(4)身体活動のサポート、(5)栄養・食糧安全保障研究の強化、の5つを掲げている。この5つの柱のもと、各コミュニティーへの食料配給やヘルスケアの提供などを行うほか、飢餓撲滅などに取り組むスタートアップ企業への25億ドル以上の投資や、栄養価の高い食料へのアクセス改善および健康増進のための身体活動への支援に対して、40億ドル以上を充てるとしている。

会議において、ジョー・バイデン大統領は「本日、100を超える組織から80億ドル以上のコミットメントが発表された」と感謝を述べるとともに、「子供はお腹を空かせて寝るべきではない。親は予防できる病気で死ぬべきではない」と述べ、対策の重要性を訴えた。

2021年3月の「米国救済計画」(2021年3月16日記事参照)において、学校給食の無償化など食料支援策が盛り込まれていたが、2022年9月までに一部を除き終了となっている。そのほか、フードスタンプと呼ばれる低所得者向けの食料支援プログラムがあるが、足元の食料品高騰による予算不足に陥っており、需要に見合う供給ができない状況が続いている(ロイター9月24日)。官民共同で行う今回の現物支給中心の対策は、食料品高騰への刺激を避けつつ、11月の中間選挙を前に公共福祉に取り組むバイデン政権の姿勢をアピールする意味合いがありそうだ。

(宮野慶太)

(米国)

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