中国の王毅外相がモンゴルを訪問、国境輸送問題などについて協議

(モンゴル、中国)

北京発

2022年09月05日

モンゴルのバトムンフ・バトツェツェグ外相は88日、モンゴルを公式訪問中の中国の王毅外相と会談した。会談では、双方の全面的戦略パートナーシップが拡大・発展していることを強調したほか、両国の相互理解と政治的信頼関係をより強化し、あらゆる分野で協力を深化させることで一致した。

両国外相は、新型コロナウイルスの影響により混乱した物流問題(2021年11月24日記事参照)を解決するため、モンゴル政府の「新復興政策」(注1)の1つである国境検問所の活発化の一環として、ガシューンスハイト・ガンツモド間鉄道(注2)建設事業の推進、中国天津港からモンゴルへの1日当たりの貨物輸送列車本数の安定化、ザミンウード・エレーン間の列車離合回数の増加、各国境検問所における処理能力の向上、世界標準に合致した国境検問所の運営などについて話し合った。また、モンゴル側がハンギ・マンダル国境検問所間を鉄道で接続することを要望したことに対し、中国側はこれを重視し、中国国内の関係機関と相談すると表明した。

「新復興政策」の項目の1つであるエネルギー・インフラ建設分野では、中国からの借款で実施されているエルデネブレン水力発電所について、建設工事を加速することを双方で合意した。

国際関係・地域問題では、バトツェツェグ外相が、モンゴルはモンゴル・ロシア・中国3者協力の発展を重視していると強調し、モンゴル・ロシア・中国経済回廊(注3)計画の実施促進について意見を交換した。

王外相はモンゴル訪問中、オフナー・フレルスフ大統領、ゴンボジャブ・ザンダンシャタル国家大会議(国会)議長、ロブサンナムスライ・オヨーンエルデネ首相を表敬訪問した。オヨーンエルデネ首相との会談の際には、ガシューンスハイト・ガンツモド国境検問所間の鉄道敷設について最終的に合意し、また中国向け石炭の長期安定供給契約を締結することで合意した。

(注1)「新復興政策」とは、新型コロナウイルス感染症のモンゴル経済に対する悪影響を緩和し、経済における独立性の強化、「Vision2050:モンゴル国家長期開発方針」を実施する基礎条件の整備、発展の制約要因について、迅速な解決を目的として、モンゴル政府が国会に提出した政策で、20211230日に可決された国会決議第106号を指す。モンゴルの発展を制約する6つの主な問題(国境税関、エネルギー、産業、都市・地方、グリーン開発、行政効率)を解決するために、最長10年間にわたって実施する中期目標のプログラムが含まれる。

(注2)ガシューンスハイト・ガンツモド間の鉄道は、タワントルゴイ炭鉱の石炭を中国に輸出することを主な目的として建設される。現状はトラックで輸送しているが、鉄道輸送に切り替えることで、輸送の円滑化や輸送コストと環境負荷の軽減が期待されている。

(注3)中国・モンゴル・ロシア間で、貿易の増加、製品競争力の強化、国境物流の円滑化、インフラ整備などを通じて協力を強化するもの。中国側は「一帯一路」構想の中の1つと位置付けている。

(藤井一範)

(モンゴル、中国)

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