上半期の対内直接投資は前年同期比49.2%増、米中貿易摩擦による中国投資が活発化

(メキシコ)

メキシコ発

2022年09月05日

メキシコの経済省外国投資局(DGIE)は822日、対内直接投資統計を発表した。それによると、2022年上半期(16月)の対内直接投資額(国際収支ベース、フロー)は2751,160万ドルで、前年同期比49.2%の大幅増となった。これは、2件の大型投資案件が2022年第1四半期に集中したことが影響している。20221月末には、メキシコのメディア放送大手テレビサが米国でスペイン語コンテンツを配信するユニビジョンとコンテンツ部門を統合して新会社を設立し、3月には、アエロメヒコ航空が企業再建プロセス(2020年7月2日記事参照)の過程でデット・エクイティ・スワップを含む債務再編を完了した、と報じられている。経済省はプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、両案件の投資額は合計で687,500万ドルに上ることを明らかにしたが、同金額を差し引いても2022年上半期の対内直接投資額は前年同期比で12.0%増加しており、好調であることに変わりないとしている。

2022年上半期の投資額の構成比をみてみると、新規投資が43.0%、利益再投資が42.4%、親子間勘定が14.6%となっている。国・地域別にみると、米国からの投資額が最も大きく1096,420万ドルで前年同期比17.1%増、カナダが283,940万ドル(2.9倍)、スペインが188,450万ドル(12.2%増)だった(添付資料表1参照)。産業別にみると、投資額全体の34.3%を占める製造業が26.2%増と好調だった(添付資料表2参照)。特に輸送機器のうちの完成車製造への投資額が194,070万ドルで25.0%増と好調で、化学品製造も約2.9倍に急増し、電気機械・機器製造も89.2%増加した。その他、金融・保険業も67.8%増と大幅に伸長し、商業も5.8%増と堅調だった。

北部ヌエボレオン州で中国からの投資が増加

DGIEのデータによれば、ヌエボレオン州への2022年上半期対内直接投資額は266,130万ドルで、2021年上半期と比較して82.9%増加している。ヌエボレオン州経済局長のイバン・リバス氏は、ヌエボレオン州の経済は順調に推移しており、すでに新型コロナウイルス感染拡大前の水準を超えた、との見解を示した(「ミレニオ」紙830日)。リバス氏は、投資増加の要因は企業がサプライチェーンを見直す中で、メキシコへのニアショアリング需要が高まったためとし、特に中国企業が「米中貿易戦争」の影響から「ヌエボレオン州を米国市場へのゲートウェイとして活用している」と説明した。中国からヌエボレオン州への投資額は2017年には330万ドルに過ぎなかったが、2018年以降に急増し、2020年には4,970万ドル、2021年には3,800万ドルと10倍以上の水準になっている。中国からの投資は特に製造業分野で活発で、20226月には重機メーカーのリンゴン・マシナリー・グループ(LGMG)が、14,000万ドルを投じ同州にエレベーター製造工場を建設することを発表し(州政府プレスリリース630日付)、8月には香港に本社を置く中国系家具メーカーのマンワ・ホールディングスが、2億ドルを投じて工場を設立することを発表している(「エル・フィナンシエロ」紙811日)。

(松本杏奈)

(メキシコ)

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