欧州産業界、水素銀行設置や中小企業支援など一般教書演説での提案を歓迎

(EU)

ブリュッセル発

2022年09月16日

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が9月14日に行った一般教書演説(2022年9月15日記事参照)について、欧州の各産業団体からさまざまな反応が上がった。

欧州機械・電気・電子・金属加工産業連盟(Orgalim)は同日付の声明で、EUレベルでのエネルギー危機への緊急対応が求められる中、電力市場改革は十分に根拠がある対応だとの認識を示した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。一方、EUの産業支援の拡大については、市場への広範囲な干渉になるリスクがあると指摘。同業界にとって長期的な競争力の低下につながる恐れがあり、明確に定義された例外的な状況においてのみ支援を行うべきだと主張した。また、多くの企業がグリーン化・デジタル化への取り組みに加え、存続がかかる競争にもさらされる中で、コスト負担を伴う、または不均衡な負担が増える可能性があるとして、警戒感を示した。

欧州の水素利用を推進する産業団体ハイドロジェン・ヨーロッパ(Hydrogen Europe)は同日付声明で、欧州水素銀行の設置は水素経済の規模拡大を確実にするために「よい出発点となる」とし、30億ユーロとされた予算の活用に意欲をみせた(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。また、一般教書演説が行われた9月14日には、欧州委が2021年7月に提案した再生可能エネルギー指令の改正案(2021年7月20日記事参照)に関連し、欧州議会が議会案でも2030年の再エネ比率目標を45%(注)とすると採決した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。Hydrogen Europeはその採決結果も歓迎し、45%という拘束力のある目標と、水素市場の拡大を後押しする仕組みとなる欧州水素銀行の設置によって、「EUは水素経済を発展させ、化石燃料から脱却する」という強いシグナルになるとした。また、水素の生産と需要の適切なバランスを取る必要があるが、欧州水素銀行はそれにふさわしい手段となると評価した。今後、再エネ指令の改正案について、それぞれの「立場」を採決する欧州議会とEU理事会(閣僚理事会)に対して、同産業が必要な投資を始められるよう、水素に関して明確な規制枠組みの策定を期待するとした。

中小企業支援に焦点が当てられたことを歓迎

欧州中小企業連合会(SMEunited)は同日付声明で、中小企業支援パッケージを歓迎し、中小企業側からも政策実現に必要な知見を提供すると表明した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

エネルギー危機対策については、エネルギー事業者の利潤に上限を設けることを歓迎。超過分は企業や家計支援に回すべきで、さらにそうした支援のためには国家補助規制の暫定危機対応枠組み(2022年7月13日記事参照)の改正も必要だと述べた。

さらに、財政規律要件の見直しが言及されたことを歓迎した。EUは財政の安定を確保しつつ、公共投資を促進すべきだとし、債務削減についてはより柔軟に対応し、投資については市場への説明責任を拡大することで、財政規律と投資誘導の公正なバランスを保証することも重要だと述べた。

(注)欧州委は当初、改正案で2030年の再エネ比率目標を40%としていたが、2022年5月に発表した「リパワーEU」で45%に引き上げることを提案した。地域・分析レポート「『リパワーEU』計画を読み解く」を参照。

(滝澤祥子)

(EU)

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