マレーシア脱炭素有力企業89社を紹介、ジェトロ報告書

(マレーシア)

クアラルンプール発

2022年09月09日

ジェトロはこのほど、マレーシアの民間企業によるカーボン・ニュートラル達成への取り組みに関する報告書「マレーシア・カーボンニュートラル・キープレーヤー調査」を公表した。同国では、政府が温室効果ガス(GHG)排出量を2030年までに2005年比で45%削減し、2050年までにカーボン・ニュートラルを達成することを宣言して以降、再生可能エネルギー、電気自動車(EV)などに関するインセンティブが次々に発表されている。

同報告書では、マレーシアの有力企業89社の取り組みと今後の有望分野を産業ごとに解説している。エネルギー関連産業では、国営石油会社ペトロナスや国営電力テナガ・ナショナルのほか、2050年までに水素生産を目指すサラワク州からサラワク電力、サラワク経済開発会社(SEDC)の子会社SEDCエネルギーなどを紹介。ENEOSと、ペトロナスの子会社ペトロナス・ガス・アンド・ニューエナジーが20219月に協業の検討を開始するなど、地場エネルギー大手と日本企業との協業が相次いでいる。これに加え、海運大手MISCがマレーシア国外5社(省庁、団体を含む)とアンモニア燃料タンカーの共同研究を始めるなど、水素・燃料アンモニアを有望分野の1つとしている。

EVやスマート農業、バイオマスなど複数の有力分野

輸送・製造関連産業では、7分野の小項目に分類した。EVバスのSKSバス・マレーシアや、サバ州の港湾を担うスリア・キャピタル、農業向けドローンを展開するポーラドローン・ソリューションなどを紹介。このうち自動車・蓄電池分野では、特にEVにおいて官民連携で持続可能なエコシステムの構築が進められている。また、物流・人流分野では、港湾・空港での積極的な再エネ導入やラストワンマイル配送へのEVバイク採用などが進む。さらに、食料・農業分野については、政府が「経済成長を促進する戦略的かつインパクトの大きい産業」の1つと位置付け、スマート農業化による生産性向上を図る有望分野としている。

家庭・オフィス関連業では、「2030年までにカーボン・マイナス・デベロッパー」を目指すサイム・ダービー・プロパティ、バイオガスプラントの開発を行う環境エンジニアリング企業のコンコルド・グリーン・エナジーなどを紹介。とりわけ、アブラヤシ廃材およびパーム油廃物を原料にしたバイオ素材・燃料については、IHIと大手印刷会社ネクストグリーン・グローバルによる協業検討を筆頭に、研究開発や実用化が進められており、バイオマス分野も有望分野の1つとした。

(芥川晴香)

(マレーシア)

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