総選挙で中道右派連合が勝利、初の女性首相誕生へ

(イタリア)

ミラノ発

2022年09月27日

イタリアでは、マリオ・ドラギ政権の任期満了前の解散を受け(2022年8月1日記事参照)、9月25日に総選挙が行われた。イタリアの同胞(FDI)を第1党とする中道右派連合の勝利が確実となり、同党のジョルジャ・メローニ党首が初の女性首相として就任する可能性が高い。投開票の結果が確定し次第、20日以内に組閣となる。

FDIはドラギ政権崩壊直後から高い支持率を保っており、世論調査がそのまま選挙の結果に反映されたかたちとなった。同党はファシズムの流れをくんでおり、連合の一角をなす同盟(Lega)のマッテオ・サルビーニ党首が親ロシア派であるなどの理由から、イタリアが、反ロシアを中心とするEU調和路線を持続できるかという議論が国内外から度々おきていた。

これを受けて8月12日には、メローニ党首が海外の報道機関に向けて、同党の政策が民主主義を脅かすものではない旨を説明。英語、フランス語、スペイン語の3カ国語で、「女性、母親、そしてキリスト教徒」という自身のキャッチフレーズに「NATOへの忠誠」を加えた演説をするなど、現実を見据えた軌道修正を図っている。

市場では「極右政権誕生」のニュースに敏感に反応し、ミラノ証券取引所は一時下落したものの、直後に回復し、上昇に転じている。イタリア国債とドイツ国債のスプレッド(利回り差)は選挙前には223ポイントまで縮小していたが、26日には243ポイントに拡大した。

棄権率37%と過去最高、右派の票はFDIに集中

投開票は続いているが、9月26日午後6時時点で上院の得票数については、中道右派連合が44.02%、中道左派連合が25.99%と、中道右派連合が多数を占める。ただし、内訳をみるとFDI26.01%、Lega8.85%、シルビオ・ベルルスコーニ元首相が率いるフォルツァ・イタリアが8.27%と、右派勝利とはいうものの、FDI以外は10%を切る結果となった。「第3の柱」として同盟関係を結んだ、マッテオ・レンツィ元首相の率いるイタリア・ビバと、元経済開発相のカルロ・カレンダ氏率いるアツィオーネによる政党連合は7.73%、ドラギ政権幕引きのきっかけをつくった五つ星運動は15.55%と、いずれも低迷した。

今回の選挙では、棄権率が37%と過去最高で、2018年の総選挙に比べると9ポイント上昇している。9月26日付「コリエーレ・デラ・セーラ」紙によると、自発的な棄権のほかに、65歳以上で運動障害を持つ人口が280万人を超えており、それも棄権率上昇の要因の可能性として挙げている。

(平川容子)

(イタリア)

ビジネス短信 812d2fb9dca3807c