韓国政府、米ローン・スター社と韓国政府間の投資紛争解決のICSIDの仲裁判断の要旨公表
(韓国、米国)
ソウル発
2022年09月06日
韓国法務部は8月31日、米国のローン・スター(Lone Star Funds、ロ社)が韓国政府に対して投資家と国家の紛争解決(ISDS)条項に規定する投資紛争解決国際センター(ICSID)に仲裁を申し立てていた事案(ローン・スター事件)に関し、ICSIDが当事者に同日通知した仲裁判断の概要を発表した(2022年7月1日記事参照)。
概要によると、ICSIDはロ社の主張の一部を認め、韓国政府に対し、ロ社と韓国ハナ銀行間の韓国外換銀行の売却価格が引き下がるまで承認を遅らせた行為(注1)は、投資協定上の公正公平な待遇義務(fair and equitable treatment)に違反したと判断し、2億1,650万ドル(注2)と2011年12月3日から完済日までの1カ月満期の米国債の利率により計算した利子を支払うよう命じた。
ロ社が仲裁を申し立てした4つの争点は以下のとおり。
(1)本事案が2011年3月11日に発効した韓国とベルギー・ルクセンブルク間の投資協定の適用の範囲かという「管轄」
(2)韓国外換銀行の売却の過程で意図的に承認を遅らせたという「金融」
(3)ロ社のベルギー法人に対する課税措置が適法であったかという「租税」
(4)本事案に対する損害額、利子などに加え、損害賠償額に将来的に賦課される可能性のある韓国およびベルギーでの課税額の請求(tax gross-up)が妥当かという「損額」
そのうち、ICSIDは、管轄、前述の損害賠償を除く金融(HSBCへの売却の過程での承認遅延)、租税、損額案件および課税案件に対しては、韓国政府の主張を認め、ICSIDの管轄外または国際法に違反していないとして、ロ社の申し立てを棄却した。
韓国政府は今回の仲裁判断について、ロ社の韓国外換銀行の売却に関する一連の行政措置を行うに当たり、国際法規と条約に基づき、差別することなく公正・公平に対応したという一貫した立場を表明し、ICSIDの判断に遺憾の意を表明した。今後、不服申し立てと執行停止の申し立てを検討しているとし、具体的な経過についても公開するとした(注3)。
(注1)2007年から2008年にかけて、ロ社はHSBCへの売却を進めていたが頓挫。その後、2011年から2012年にかけてハナ銀行に売却した。
(注2)ロ社が仲裁を申し立てた損害額は約46億8,000万ドル。
(注3)ICSID条約52条1項の事由に該当する場合、仲裁判断から120日以内に撤回の申し立てが可能。
(当間正明)
(韓国、米国)
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