投資紛争解決のICSID、仲裁手続きの終了宣言、米ローン・スター投資会社の申し立てに

(韓国、米国)

ソウル発

2022年07月01日

韓国法務部は6月29日、米国ローン・スター投資会社(Lone Star Funds、以下、ロ社)が韓国政府に対し、投資家と国家の間の紛争解決(ISDS:Investor-State Dispute Settlement)条項(注1)に規定する投資紛争解決国際センター(ICSID)に仲裁を申し立てていた事案に関し、ICSIDが6月29日に「手続きの終了」(Discontinuance of Proceeding)を宣言したと公表した。

手続きの終了宣言は仲裁手続きが完了したことを意味し、仲裁判定部は手続きの終了宣言から120日以内に裁定を下すことになっていると同部では説明している(注2)。

この件は、ロ社が2012年に買収した韓国外換銀行の売却の承認を意図的に遅らせたとして、韓国政府を相手取り、ICSIDに仲裁を提訴した事案(注3)で、2016年6月の最終審理が終了して以来、6年を経て手続き終了が宣言された。

同部は「韓国政府は、裁定が出たら直ちに関係省庁のタスクフォースを中心に分析し、必要な措置を検討する一方、関連法令に抵触しない限り情報を開示する」とコメントしている。

なお、韓国政府に対するISDS仲裁事案は合計9件で、審理中は5件(本件を除く)。この中には、米ヘッジファンドのエリオット・マネジメントがサムスン物産と第一毛織の合併を進める過程で、韓国政府が不当に介入したと主張、約7億7,000万ドルの損害賠償を請求した事案も含まれている(「朝鮮日報」6月29日)。

(注1)韓米FTA第11章参照。

(注2)ICSID仲裁手続き仲裁規則第38条と第46条に基づく裁定。

(注3)ロ社は、破綻寸前となっていた韓国外換銀行を買収し、その後売却を進める過程で、韓国金融委員会が韓国外換銀行の売却の承認を意図的に遅らせ、国税庁も恣意(しい)的かつ矛盾する課税措置を取ったと主張、2012年11月21日に韓国政府に対し、46億7,950万ドルを請求した。これに対し、韓国政府は、韓国外換銀行の売却承認に関しては、国際法や協定上の内国民待遇の原則に則り、公平かつ公正な待遇を付与していると主張していた。

(当間正明)

(韓国、米国)

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