外国為替当局、国民年金と通貨スワップ取引の実施に合意

(韓国)

ソウル発

2022年09月28日

韓国企画財政部は926日、関係省庁で構成する「非常経済対応タスクフォース」を開催し、金融・外国為替市場の動向を点検し、今後の対応の方向性について議論した。英国の大規模な国債発行による景気刺激策の発表により、市場全般にリスク回避心理が拡大し、欧米主要国の株価が下落、ドル高傾向が続いていることに加え、韓国の株式市場も欧米主要国の株価との連動性が高まっていると分析し、市場のモニタリングの強化を求めた。

「非常経済対応タスクフォース」では、外国為替市場の需給の不均衡緩和のため、(1923日に発表した外国為替当局と国民年金の100億ドルを上限とする外国為替スワップを迅速に実施、(2)ドル高に伴う与信限度の制約で造船企業の先物為替の売りに困難が生じていること(注1)に対し、外国為替当局が直接買い入れる準備を進めることも確認した。

為替スワップ取引の実施については、923日に外国為替当局(韓国銀行、企画財政部)と国民年金公団との間で合意した。取引形態は為替スワップ取引、各件の満期は6カ月または12カ月と設定した(注2)。取引限度は100億ドルで期限は2022年度末とする。これにより、韓国が保有する外国為替は、契約期間に限り一時的に減少するものの、満期時には全額償還される。

企画財政部では、国民年金は取引相手のリスクなしに海外投資資金が安定的に確保でき、直物為替の買い入れ需要が緩和(減少)し、外国為替市場の需給の安定化に寄与するとしている。

これに対し、「聯合ニュース」(923日)は、国内外から「国民年金による海外投資がウォン安を助長している」(注3)との指摘がある点について、「為替スワップ取引は、外国為替市場の需給安定にも付随的に役立つのは事実だが、これを目的としたものではない」との保健福祉部の年金政策局長によるコメントも掲載し、あくまで国民年金による外貨調達を安定的に行うことが目的だと強調した。

(注1)「韓国経済」(925日)によると、造船企業は船舶受注時の為替損失を回避するため、受注代金をあらかじめ銀行に先物為替の予約をし、銀行は信用取引に分類している。しかし、最近のドル高の影響により、造船企業の与信限度が上限に達し、船舶を受注しても先物為替を売り切れない事例が増えているという。

(注2)一般的に、金融機関の為替スワップの満期より長い期間の設定とされている。

(注3)ドルと韓国ウォンの外国為替相場は、926日に1ドル=1,431.3ウォン付近まで下落。国民年金は900兆ウォン(約909,000億円、1ウォン=約0.101円)を超える資産を運用し、毎年約300億ドルを海外に投資している(「聯合ニュース」923日付)。

(当間正明)

(韓国)

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