EUの緊急対応への要望が相次ぐ欧州産業界、節減義務化には消極的な声も

(EU)

ブリュッセル発

2022年09月13日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は9月9日、同日に開催されたEU理事会(閣僚理事会)のエネルギー担当相の臨時会合(2022年9月12日記事参照)を前に声明を発表し、EUレベルでの緊急エネルギー危機対策の早期採択につながると、開催を歓迎した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同連盟は、EUレベルで調整して危機に対応することや、危機の影響を綿密にモニタリングし、必要な調整を行うために、一時的な緊急対応が重要だとした。

一方、欧州委員会が検討している加盟国へのエネルギー需要削減の義務化などは「大幅な介入で、真に例外的な状況に限り正当化されるものだ」と消極的な姿勢を示した。そして、欧州にとって必要なことは、一刻も早くエネルギー市場を平常化することだと指摘。そのために、需要側にはエネルギー需要削減について市場原理に基づいたインセンティブを与える、供給側には再生可能エネルギーなどの展開、域内でのガス生産や供給源の多角化を推進させるといった、需給双方での適切な措置を取ることが今まで以上に求められているとした。また、将来、同じような事態が起きることを避けるために、電力系統や連係線の整備を進め、域内の相互接続を強化することも必要だとした。

欧州商工会議所(ユーロチェンバース)も9月7日付の声明で、EUに対して、的を絞った企業への財政支援、バランスの取れたエネルギー需要削減策の実施、一時的な市場介入策を求めた(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

同会議所はまず、企業、消費者など全てのエンドユーザーが適切な価格のエネルギーを確保するには連帯と欧州レベルでの解決策が必要だと指摘。同時に、全てのエンドユーザーが公正に節減努力を行うべきだと強調した。そして、エネルギー効率の向上に多くの投資を行った企業に対してさらに負担を求めないこと、また、エネルギー効率や持続可能性の向上に取り組む企業に対して、給付金や許認可プロセスの迅速化といった的を絞った支援策を実施すべきだとした。

加えて、価格の安定のため、市場原理に基づいた一時的な介入策が必要だとしたが、いかなる施策も、域内エネルギー市場の正常な機能や脱炭素、エネルギー節減への取り組みを台無しにすることがないようにすべきだとした。そして、欧州委に対して、政策決定に当たって詳細な選択肢を準備し、企業の利益を慎重に考慮することを求めた。

鉄鋼業界は通商分野でも踏み込んだ対応を求める

欧州鉄鋼連盟(EUROFER)も9月9日、EUがエネルギー危機の緊急対策を速やかにまとめることを要望した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同連盟は、欧州化学工業連盟(Cefic)など他の11のエネルギー集約型産業団体とともに9月6日、欧州委に対してエネルギー価格高騰への緊急対応を求める書簡PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を出していたが、9日の声明では、欧州委が検討する政策案には、存続の危機にあるエネルギー集約型産業を対象とした緊急対策がないと不満を示した。同連盟は、欧州ほどエネルギーコスト負担が重くない、またはロシアへの制裁を行っていない第三国の生産者と比較して、欧州産業界が不利な状況に置かれているとして、異例の危機に際し、競争力維持のためにはエネルギー政策だけでなく、通商政策においても、これまでに例がない緊急対応が必要だと訴えた。

(滝澤祥子)

(EU)

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