2023年度予算案、楽観的な経済成長見通しを前提に財政規律を維持

(メキシコ)

メキシコ発

2022年09月14日

メキシコ大蔵公債省は9月8日、2023年度(暦年)歳入法案と歳出計画を国会に提出した。同法案によると、歳入は前年度予算比9.9%増、2022年歳入見通しと比較しても0.8%増を見込む。石油収入や手数料収入などを除く税収でみると、歳入予算比で11.6%増、実際の歳入見込み額から9.9%増と大幅な税収増を見込む。歳出は前年度予算比で11.6%増を計画し、歳入増に合わせて拡大する。この結果、プライマリー収支は均衡、債務残高のGDP比も2022年と同水準の49.4%に抑え、従来どおり財政規律を維持する。

予算策定の前提となる「経済政策一般基準」によると、政府は2023年の経済成長率を3.0%としている(添付資料表参照)。民間シンクタンク38社の経済成長率見通し平均値(2022年9月1日発表)は1.36%、中央銀行が8月31日に発表した成長率見通しは1.6%となっており、かなり楽観的な見通しといえる。2023年のインフレの見通しは3.2%とし、中央銀行の見通しとは同一だが、前述の民間シンクタンクの見通し平均値の4.41%と比較すると楽観的だ。また、米国の2023年の経済成長率を1.8%としており、民間シンクタンクの見通し平均値の1.22%と比較するとかなり高い。原油生産量についても2023年平均で日量187万2,000バレルとしているが、国家炭化水素資源委員会(CNH)の統計によると、2022年1~8月の実績は同162万5,800バレルにとどまっており、かなり楽観的な見通しといえる。

2023年は税制改正なし

2018年12月に発足したアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール現政権下では、今まで毎年、歳入法案の国会提出に伴い、新税の創設や税率の変更は盛り込まれてこなかったが、徴税強化や脱税防止などに向けた幾つかの制度変更が、連邦税務総則法(CFF)、所得税(ISR)法、付加価値税(IVA)法の改正として毎年提出されてきた。しかし、2023年度予算案に際しては、連邦公課法(LFD)に基づく連邦行政手数料の改定を除き、税法改正は一切盛り込まれていない。

税制改正を国会に一切提案しない中でも、政府はGDP成長率見通し(3.0%)を大きく上回る9.9%増の税収増を見込んでいる。2022年はガソリン・ディーゼルの価格を低く抑えるため、生産サービス特別税(IEPS)の課税をマイナスにすることで、政府が実質的な補助金を支給していたが、2023年に原油価格が低下して補助が減ることで、IEPS税収が4.1倍と大幅に増えることを政府は期待している。他方、ISRやIVA、輸入税(関税)などの税収も2022年より増えると見込んでいるため、2022年と同様、国税庁(SAT)による税務調査などの徴税活動の強化や還付申請の審査強化などが想定され、進出日系企業にとっては厳しいビジネス環境が続くことが懸念される。

なお、メキシコの大蔵公債省発表の2028年までのマクロ経済指標見通しは添付資料参照のこと。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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