DX時代に即した人材戦略、リスキリングの取り組みを強化

(ルクセンブルク)

ブリュッセル発

2022年09月14日

 ジェトロは96日、ルクセンブルク雇用開発庁(ADEM)が実施する「フューチャー・スキル(FutureSkillsイニシアチブ(フランス語以下FSI外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの概要や狙いなどについて、ADEMのイザベル・シュレッサー長官と、FSIのプログラム・コーディネーターであるイネス・バー氏に聞いた。

FSIとは、ADEM2020年、新型コロナ禍を経て社会・産業構造の変化が急速に進む中で、従来の失業者対策に加えて、産業界のニーズの変化により将来的に失業リスクがある人材を支援する目的で開始したもの。

FSIは、主に以下の3つの要素から構成される。

1.失業者に対するアップスキリングとリスキリング(注):2020年に開始された当初はアップスキリングに重点を置き、500人の失業者に対して、デジタルスキルやプロジェクトマネジメントなどの研修を実施した。今後はリスキリングの要素を取り入れ、失業者の状況に即した、より個別化した研修プログラムを提供していく予定。

2.従業員へのアップスキリングとリスキリング:労働市場の変化による失職を防ぎ、従業員による新しい挑戦に備えることを支援する目的で作られたプログラム「Skills-Plang」の実施。労働力分析や人材研修に知見を有するコンサルタントと協働し、研修が必要な人材を特定し、提供する。20182019年にADEMが実施した「デジタルスキル・ブリッジ(Digital Skills Bridge外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」というパイロットプロジェクトをベースにして考案された。

3.市場分析:労働市場全体および個別セクターの現状分析や将来予測を行い、今後必要な取り組みを策定する。求人情報などを参考に、市場における需給ギャップを調査するなどし、長期的な労働市場戦略にも活用していく。

長期的な生産性の向上につなげるイニシアチブ

自動化やデジタル化によってビジネスの形が変化する中で、特に従業員に対するアップスキリングとリスキリングは、日本企業にとっても今後、認識すべき課題といえる。

ADEMは、企業の規模や業種によって必要とされる人材や技能が異なるという点を強く認識しており、それら多様なニーズに応えるべく、多種多様なコンサルタントと協働し、企業への支援体制を整えていくとしている。他方で、シュレッサー長官とバー氏は、これら支援プログラムはあくまでも個人のスキルに主眼を置いて設計されたもので、変化の中にあっても、労働者が継続して雇用される状況を自らつくることが重要と強調している。それが長期的には、国内の生産性向上につながるとのこと。

両氏によると、Skills-Plangは今後、経営者団体および労働者団体との協議を経て、運用方法の詳細を定め、正式に開始される予定。

(注)アップスキリング(up-skilling)は、現在の業務の延長線上で能力の向上を図ること。これに対して、リスキリング(re-skilling)は、デジタル化などにより産業構造が変わる中で、職種転換も見据えて新たなスキルを習得すること。

(山田泰慎)

(ルクセンブルク)

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