フィンランド、水素プロジェクト加速に向け投資拡大を発表

(フィンランド、ロシア、スウェーデン)

ロンドン発

2022年08月02日

フィンランド政府は722日、たなエネルギー技術と大規模実証プロジェクトへの投資予算を1億ユーロ増額することを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。増額の1億ユーロのうち5,000万ユーロを水素、残りの5,000万ユーロはその他の大規模実証プロジェクトに割り当てる。既に発表済みのものも含めると、2022年に15,300万ユーロが投じられることとなる。

ロシアのガスプロム・エクスポートは、フィンランドのエネルギー企業ガスムがロシアからの天然ガス供給契約についてロシア通貨ルーブルでの支払いを拒否したことを理由に、521日以降、フィンランドヘのガス供給を停止している(フィンランド政府5月20日付発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。こうした状況も受け、政府はゼロ排出のエネルギー技術の必要性を認識し、622日にはこれまで主にロシアからの天然ガスを扱ってきた国営送ガス事業者ガスグリッドが今後数年間で水素ネットワークを構築することを支持外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしていた。水素市場に関する情報サイト「ハイドロゲン・セントラル」の6月23日付記事外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、同社はまず国内、その後は国外に水素の供給網を構築する子会社を設立する予定で、水素の製造は他の企業が担う。新たな水素供給網は3つの「水素バレー」で構成され、2つは既存の風力発電インフラに近い西海岸に、もう1つは南東部に設置する予定だという。

ガスグリッドはに複数の水素関連プロジェクトを進行している外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。例えば、北欧水素ルートプロジェクトは、スウェーデンのノルディオン・エネルギ(Nordion Energi)との取り組みで、効率的に水素を輸送するパイプラインのネットワークをボスニア湾地域に構築するもの。また、スウェーデンの鉄鋼企業オバコのイマトラ工場で、フィンランドの化学品企業のケミラの副生水素(注)の利用に向けた輸送の実証プロジェクトも立ち上げている。

同社の再生可能燃料メーカーネステのポルボー製油所におけるクリーン水素プロジェクト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます715日、欧州委員会から水素分野の研究開発と実用化のプロジェクト「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」(2022年7月19日記事参照)として承認された。クリーンな水素の製造により、輸送・産業の低炭素化に向けて商業的に実行可能な技術の開発を行う。

(注)他の製品を製造する際に副産物として生じる水素。

(島村英莉)

(フィンランド、ロシア、スウェーデン)

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