欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)、水素分野で初の承認

(EU)

ブリュッセル発

2022年07月19日

欧州委員会は715日、15EU加盟国(注)が共同申請した水素分野の研究開発および実用化のためのプロジェクト群「IPCEI Hy2Tech」を「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」として承認した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

IPCEIは、イノベーションの必要な重点産業への複数の加盟国による共同支援を可能とする、EU国家補助ルールの特例措置だ。欧州委は202112月にIPCEIの採択基準に関する政策文書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを示し、重点分野に同措置を戦略的に適用する方向性を打ち出していた。水素分野のプロジェクトのIPCEI承認は今回が初となる。承認により、(1)水素の製造、(2)燃料電池技術、(3)貯蔵および輸送運搬技術、(4)エンドユーザーによる活用技術まで、参加35社の41プロジェクトに対し、最大で総額54億ユーロの公的助成が可能となる。

製造技術からモビリティー分野での利用拡大まで幅広い技術を支援

欧州委が承認の発表で紹介した例によれば、41のプロジェクトには(1)水素の製造技術では、エストニアの中小企業エルコゲンの、グリーン水素製造のための電解槽に用いられる重要な原材料の使用量を減らす研究開発、(2)燃料電池では、オランダの中小企業ネドスタックによる船舶用の水素燃料電池の開発、(3)貯蔵技術では、フランスの化学・素材製造アルケマによる水素貯蔵タンク用の素材に完全にリサイクル可能なバイオ原料を用いる技術、(4)エンドユーザーとしては、ドイツのダイムラー・トラックによる水素燃料トラックの開発など、主に大型車・鉄道・船舶などモビリティー分野での活用が含まれる。欧州委は、今回の国家補助を活用してプロジェクトが推進されることにより、88億ユーロの民間投資が生み出されると試算する。

(注)オーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダ、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スペイン。

(安田啓)

(EU)

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