欧州鉄鋼連盟、2023年の鉄鋼需要回復を見通すも不確実性を懸念

(EU)

ブリュッセル発

2022年08月31日

欧州鉄鋼連盟(EUROFER)は824日、四半期ごとに発表している2022~2023年EU経済および鉄鋼市場見通しPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EUの鉄鋼需要は2021年、前年比15.2%増(2022年5月9日記事参照)と新型コロナウイルス危機からの回復基調にあったが、今回、2022年の鉄鋼需要の見通しについては前年比1.7%減とし、前回5月の見通し(1.9%減)からはわずかに上方修正したものの、マイナスを維持した。

2023年については、鉄鋼需要は回復し始めるとして同5.6%増と、こちらも前回予想(5.1%増)をやや引き上げた。ただし、現在も進行中のエネルギー価格の高騰、インフレやサプライチェーンの混乱に加えて、20222月に始まったロシアによるウクライナ侵攻により、鉄鋼需要は引き続き高い不確実性にさらされていると指摘した。

2022年上半期はロシアからの鉄鋼輸入がほぼ半減、ウクライナ情勢の影響色濃く

ウクライナ情勢は、鉄鋼市場や関連業界にも徐々に変化をもたらし始めている。

EUの鉄鋼製品(完成品)の輸入量は、2022年上半期(16月)は前年同期比9%増となり、全体では高水準が続いている。2022年上半期の完成品の主要輸入相手国はトルコ(構成比:14.9%)、インド(10.1%)、韓国(9.3%)、ロシア(7.3%)、ウクライナ(5.3%)で、これらの5カ国で全体の47%を占めた。しかし、ウクライナ侵攻やEUの対ロシア制裁によって、ロシア、ウクライナからの輸入はそれぞれ46%減、33%減と大幅に減少した。インド、トルコもそれぞれ18%減、1%減となった。一方、韓国からの輸入は35%増と著しい伸びになった。

また、EUROFERは鉄鋼ユーザー業界について、2022年第1四半期(13月)の生産高は全体で前年同期比4.9%増とした。建設、機械エンジニアリング、運輸業界は好調だったものの、部品不足や輸送コストの上昇の影響を受けて、自動車、家電機器業界は既に逆風にさらされており、各業界の生産高への影響は一様ではなかったと指摘した。EUROFERはユーザー業界の今後について、ウクライナ情勢に加え、さらに拍車がかかるとみられるサプライチェーンの混乱や生産コストの上昇といった課題は、これまで比較的好調だった建設業界などにものしかかるとして、先行きの不透明さを強調。EUROFERは今回、ユーザー業界の2022年の生産高について、前回5月の予測では約2%増としていたが、1.1%増にとどまるとの厳しい見方を示した。

(滝澤祥子)

(EU)

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