米テラパワー、7億5,000万ドルの資金調達、次世代原子炉・放射線がん治療事業に向け
(米国、韓国)
ヒューストン発
2022年08月17日
マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が設立した米国原子力ベンチャーのテラパワー(本社:ワシントン州ベルビュー)は8月15日、7億5,000万ドルの資金調達を行ったと発表した。資金調達は韓国のSKとSKイノベーション、ビル・ゲイツ氏が共同で主導した。うち、SKとSKイノベーションはテラパワーに2億5,000万ドル規模の株式投資を行ったとしており、SKグループは今後、韓国や東南アジアなどでテラパワーの次世代原子炉商用化事業に取り組む計画だ(中央日報、8月16日)。
テラパワーは調達した資金を同社の(1)次世代原子炉、(2)核医学の事業強化に充てるとしている。
(1)の同社の開発する次世代原子炉について、ナトリウム冷却型高速原子炉技術と溶融塩エネルギー貯蔵システムを組み合わせたもの。従来の原子炉と比べて安全で高効率な原子炉だとされている。同社は、次世代原子炉の商用化に向けて2021年6月2日、投資家のウォーレン・バフェット氏が所有する米国電力会社パシフィコープとワイオミング州のマーク・ゴードン知事(共和党)とともに、ワイオミング州に実証プラントを建設すると発表している(2021年6月9日記事参照)。
(2)の核医学事業については、放射線がん治療法の1つである「アルファ線内用療法」に用いられる、放射線同位元素のアクチニウム225の製造の実用化を図るとしている。同社は将来的に同元素を製薬業界に安定的に供給することで、がん治療法の開発に役立てるとしている。
テラパワー社長兼最高経営責任者(CEO)のクリス・レべスク氏は「当社はいまの世代が直面する最も困難な課題に対して、イノベーションを通じて解決をすることを約束する」「当社は、カーボンフリーの次世代原子炉を通じた気候変動対策から、放射線同位元素によるがん治療まで、技術ソリューションを展開しており、世界中の投資家からの注目を集めている」と述べた。
また、SKのエグゼクティブバイスプレジデント兼グリーン投資センター長のモーワン・キム氏は「当社は米国のリーディングカンパニーとともに、エネルギー、テクノロジー、バイオサイエンスへの投資を拡大できることをうれしく思っている。今回の投資は、当社の世界的な二酸化炭素(CO2)削減目標を強化するものだ」と述べている。
(沖本憲司)
(米国、韓国)
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