吉林省で中国初の10ギガワット級揚水式発電所が着工

(中国)

大連発

2022年08月02日

中国・国家電網は730日、吉林省で蛟河揚水発電所(注1)の建設を全面的に開始すると発表した。同発電所は中国初の10ギガワット級(注2)の揚水発電所で、揚水発電所8基を建設するという吉林省の第14次5カ年(2021~2025年)規外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにおける最初のプロジェクトとなる。

吉林省の電力構成は火力発電が53.2%、風力・太陽光発電が29%、水力発電が17.8%となっている(「新華網」81日)。冬季は、風力が強く気温も下がり、集中暖房で電力の需要が高まることから、短時間で大量の電力を消費するため送電負荷が大きくなる。そのため、吉林省では第145カ年規画の中で「陸上風・光三峡」(2022年7月22日記事参照)、「山水エネルギー貯蔵三峡(注3)」などのエネルギー貯蔵計画を立ており、国家電網は、今回の蛟河揚水発電所は「山水エネルギー貯蔵三峡」における重大プロジェクトと位置付けている。

蛟河揚水発電所の投資総額は697,000万元(約1,394億円、1元=約20円)で、設備容量は最大1,200メガワットになる。今後、年間発電量は2,000ギガワット時となり、石炭消費量を年間約27万トン、二酸化炭素排出量は約51万トン削減できるとしており、温室効果ガスの削減が期待されている。

揚水発電によるエネルギー貯蔵方法は現在、最も技術成熟度が高く、リーズナブルであり、再生可能エネルギーを利用した最大レベルの電力源とされている。また、不安定な再生可能エネルギーの貯蔵を調整することで、再生可能エネルギーを最大限に活用することが可能となる。

揚水発電が推奨される背景には、国家能源局が20219月に発表した「揚水式エネルギー貯蔵の中長期発展画(2021~2035年)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」がある。同規画によると、中国におけるエネルギーのグリーン・低炭素化への需要が高まっていることから、風力発電や太陽光発電などと相乗効果がある揚水蓄電に期待が高まっている。また、同規画では、揚水蓄電容量を2025年までに62ギガワット以上、2030年までに120ギガワット程度に引き上げることを目標に掲げている。

(注1)電力需要が少ない時間帯に余剰電力を利用して下部貯水池から上部貯水池へ水をくみ上げ、電力需要がピークの時間帯に再び上部貯水池から下部貯水池へ放水することで発電する仕組みの発電所。

(注21ギガワットは1,000メガワット。

(注3)「山水エネルギー貯蔵三峡」とは、吉林省白山市・敦化市・蛟河市の揚水発電所を中心とした、吉林省における「揚水式エネルギー貯蔵の中長期発展規画(20212035年)」に基づいた国家級プロジェクト。総投資額2,100億元、設備容量は35ギガワット。

(李莉)

(中国)

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