吉林省、アジア最大級のバナジウム電池の生産基地へ

(中国)

大連発

2022年07月22日

中国の吉林省人民政府は718日、遼寧格瑞帕洛孚新能源(遼寧省盤錦市)が吉林省白城市通楡県で500メガワット級の「バナジウムレドックスフロー電池」(注1)工場を着工したと発表した。

投資金額は10億元(約200億円、1元=約20円)で、20237月末の稼働を目指す。合計8本の生産ラインを設け、年間生産高は30億元に達する予定だ。完工後は、中国最大級のエネルギー貯蔵産業の生産・研究開発センターとなるとともに、アジア最大級のバナジウムレドックスフロー電池の生産・加工基地となる見込み。同工場で製造した製品は国内販売のほか、オーストラリア、ドイツ、チリなど13カ国へ輸出する。

遼寧格瑞帕洛孚は、バナジウムレドックスフロー電池技術の研究開発や産業化を進めるハイテク企業だ。高性能過フッ素化イオン膜、高活性電極、低流動抵抗、低自己放電、高エネルギー効率などを備えた同社製造のバナジウム電池は国際的にトップレベルの特許技術を取得している。この電池は長寿命で、鉛蓄電池やリチウム電池など従来の電池より低コストのため、太陽光発電、風力発電、スマートグリッド(次世代送電網)、電力のピークシェービング、分散型発電所、電気自動車の急速充電などに最適だ。

20214月に公表された「吉林省第145カ年規画と2035年のビジョン」では、水素、風力、太陽光、バイオマスなど再エネルギー産業の発展を強調しており、吉林省白城市や松原市2都市を重点に「陸上風・光三峡」プロジェクト(注2)を進めている。中でも白城市通楡県は大興安嶺山脈と長白朝鮮族自治区の間の南西気流の通り道に位置し、風力資源が豊富な地域であることから、上記プロジェクトと併せ、吉林省のクリーンエネルギー産業基地として位置づけられつつある。

(注1)バナジウムレドックスフロー電池は、バナジウムなどのイオンの酸化還元反応を利用して充電・放電を行う蓄電池。長寿命で安全性が高いなど、電力系統用蓄電池に適した特性を持つ。

(注2)「陸上風・光三峡」プロジェクトとは、吉林省西部の豊富な風力・太陽光資源を活用して風力発電や太陽光発電を推進する、吉林省の大型新エネルギープロジェクト。主要対象地域は白城市、松原市計3都市11県とされ、20211028日に着工式が行なわれた。

李莉

(中国)

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