技術者の国外移住の状況、IT企業幹部に聞く

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2022年08月19日

ロシアによるウクライナへの侵攻後、アルメニアやジョージアなどのロシア周辺国や欧州に移住するロシアのIT技術者が増えている。正確な人数は不明だが、10万人が出国したともいわれる。帰還の動きも一部では報じられるが、今後もIT技術者の出国が続くとの見方がある。ロシア系IT企業関係者にロシアIT技術者による国外移住の背景を聞いた(89日)。

問:貴社の概要について。

答:アプリケーション開発やクラウドサービスを顧客の要望に応じて提供している。1990年代前半にサンクトペテルブルクで創業し、90年代後半に米国のニューヨークに本社を移した。活動拠点は米国だが、今でもロシアのIT技術者を1,500人雇用している。

問:ウクライナ侵攻以降、なぜロシアのIT関連技術者の国外移住が加速したのか。

答:侵攻開始後、当社はロシアの全拠点の閉鎖を決め、従業員にロシア国外に出国するよう提案した。その理由は、a.欧米諸国の対ロ経済制裁によりロシア国外からロシアの技術者へ送金が難しくなったこと、b. 「ロシア」との関係を理由に国外の銀行や一部の顧客が当社との取引を断るといった、いわゆるレピュテーションリスクにさらされるようになったためだ。

家庭の事情があるものなど一部を除き、ほぼ全てのIT技術者が国外への移住に同意した。彼らはもともと事務スタッフに比べて給与水準が高く、国外で生活するだけの十分な給与を得ているためだ。年内には大部分が出国するだろう。新たな勤務地は既に拠点があるセルビア、アルメニア、カザフスタンが多い。これら諸国は欧米諸国に比べて生活コストは比較的安いことも、国外移動がスムーズに進んだ一因だ。アルメニアはロシアから移住するIT技術者が急増したため、住宅コストなどが急上昇した。今はセルビアへの移住が多い。

問:あなた自身が移住を決めた理由は何か。ロシアへの帰還の可能性は。

答:ロシアの政治不安定化の懸念、経済危機への不安、自身や家族の安全確保の観点から移住を決意した。帰還は今のところ念頭になく、周辺でも帰還するとの話は聞かない。戻るケースがあったとしても、ロシア国内にある資産の処分など一時的なものと理解している。

(欧州ロシアCIS課)

(ロシア)

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