ハイブリッド勤務は労使双方にメリット、在宅勤務は4~8%の賃金上昇に相当、米研究者報告書

(米国)

米州課

2022年08月10日

新型コロナウイルス感染が拡大して以降、多くの企業が在宅勤務を導入した。他方で、状況が改善されるにつれ、通常のオフィス勤務に戻すところも出ている。米国スタンフォード大学のニコラス・ブルーム教授をはじめとする3人の研究者は7月、ハイブリッド勤務が従業員や企業双方にもたらすメリットについて最新の研究結果を発表した。

この調査は20212022年の6カ月間、旅行代理店のトリップ・ドット・コムのエンジニアリング、マーケティング、財務担当の1,612人を対象に実施された。誕生日が奇数日の従業員は水曜日と金曜日に在宅勤務が認められる一方、偶数日の従業員は毎日オフィスで勤務する必要があると設定し、在宅と出勤のハイブリッド勤務の効果を検証した。

その結果として、ハイブリッド勤務は従業員の離職率を35%低下させ、仕事に対する満足度を向上させることが分かった。従業員は在宅勤務について48%の賃金上昇に相当する価値を感じているという。在宅勤務日の労働時間は約80分減少するが、出勤日の労働時間は約30分増加し、1週間の労働時間の構造に変化が生じたという。また、在宅勤務の導入により、コミュニケーションの取り方も変化したとしている。在宅勤務が許される従業員はオフィス勤務時でも、個別メッセージやグループ間のビデオ通話を増やしていた。中でも、ITエンジニアの生産性は在宅勤務によって8%向上し、在宅勤務が許された従業員の自己評価でも生産性は平均で1.8%高くなり、ポジティブな結果が確認されたという。

在宅勤務による業績評価や昇進への影響はどの部門でもみられなかった。

この調査は在宅勤務の大きなメリットとして、柔軟性や、通勤時間と仕事の準備時間の回避を挙げている。在宅勤務はこれらにかかる時間(平均70分)を余暇や追加の労働時間に充てることができ、オフィス勤務時よりも静かな環境で働けるため、個人で集中して取り組む仕事に適しているとしている。また、在宅勤務のローテーションを組むことで、オフィスのスペースを削減できるため、ハイブリッド勤務の導入は企業にとっても理に適っていると述べている。

(片岡一生)

(米国)

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