ハンガリーのガソリン価格上限制、法人名義車を対象外に

(ハンガリー、ウクライナ、ロシア)

ブダペスト発

2022年08月03日

ハンガリーのグヤーシュ・ゲルゲイ首相府長官は730日、緊急の記者会見を開催外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。202111月から導入しているガソリンの価格上限制について、5月に外国登録の車を対象外にしたこと(2022年6月10日記事参照)に続き、国内での登録でも社用車など法人名義の車は適用対象外とすると方針転換したことを明らかにした。これを定める政令は同日に官報で公布され、即日施行された。

これにより、政府が実施している1リットル480フォリント(約163円、1フォリント=約0.34円)の上限価格でガソリンを購入できる者は以下に限定された。

  • ハンガリー国内で個人名義で登録された乗用車
  • トラクターなどの農業機械
  • タクシー
  • ハンガリー国内で登録された7.5トン以下のトラック

価格上限制の規制変更を急きょ行ったきっかけについて、現地メディアは、記者会見前日の29日のハンガリー石油ガス最大手MOLのヘルナディ・ジョルト最高経営責任者(CEO)による「ハンガリーが価格上限制に何の変更も行わないならば、外国からのガソリン燃料は届かなくなるのではないか」との発言だと報じている。MOLはブダペスト近郊の石油精製所で先延ばしにしてきた定期点検作業をこれ以上延ばせないとして、29日から当面の操業休止に入った。ロシアのウクライナ侵攻の影響で逼迫していた石油製品の国内需要にさらに拍車をかける状況に危機感を強めた政府は、対応策を取らざるをえなくなったかたちだ。

グヤーシュ長官は、政府が有する戦略的備蓄の4分の1に当たる18,400万リットルのディーゼル燃料を開放したとしても、需要を満たすには価格が非常に高騰している燃料の輸入が必要なこと、国内に現在備蓄されている分では個人名義の車が消費する量しか供給できないことを説明し、国民の理解を求めた。

この決定に対して、民間輸送業者組合(MKFE)と陸運組合(NiT Hungary)は81日、共同で反論の書簡を政府に送付。陸運事業者にとって燃料代が上がることは死活問題であり、同様のコスト構造にあるタクシー業界が上限価格制で購入可能者の対象に認められるのであれば、自分たちに認められない理由が分からないとして、再考を求めた。

(末廣徹)

(ハンガリー、ウクライナ、ロシア)

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