英政府、新たな途上国向け関税制度を発表
(英国、アフリカ、アジア、オセアニア、米州)
ロンドン発
2022年08月18日
英国のアン・マリー・トレビリアン国際通商相は8月16日、開発途上国の産品を輸入する際により低い関税率を適用する一般特恵関税制度(GSP)に代わる開発途上国貿易制度(DCTS)に関する政策文書を発表した。GSPはEU離脱に伴う移行期間終了時に導入されたもので、大半はEUから継承した制度となっている(2020年11月12日記事参照)。
DCTSの対象国はアフリカやアジア、オセアニア、米州の65カ国・地域で、2023年初頭から適用する予定。現行のGSPの枠組みの名称も変更し、「後発開発途上国枠組み」を「包括特恵関税」、「拡張枠組み」を「拡張特恵関税」、「一般枠組み」を「標準特恵関税」とする。
政策文書の概要は以下のとおり。
・原産地規則:後発開発途上国向けに、より緩和した品目別規則(PSR)を導入(英国政府サイト参照)。HSコードの48の「類(2桁)」につき、非原産材料の割合を75%まで認めるほか、80の「類」については共通して適用する単一の原産地規則を設定し、簡素化するなどの措置を導入。さらに、後発開発途上国に対し、英国との経済連携協定(EPA)やDCTSで関税ゼロ・割り当てなしとなっている国。地域の原材料に関し、英国向け輸出時に拡張累積を認める(注)。
・関税:拡張特恵関税につき、拡張枠組みから新たに156品目の関税を削減または撤廃(英国政府サイト参照)。季節関税(輸入時期により適用税率が異なる関税)も簡素化するほか、標準特恵関税対象国につき、一般枠組みで関税が2%以下の品目は関税を撤廃。
・品目別卒業(適用除外措置):標準特恵関税対象国に該当するインド、インドネシアのみを対象にHSコードで「類」レベルの卒業品目を設定。基準は類レベルで英国の輸入総額に占める割合が6%以上となった場合とし、センシティブ品目については1%以上とする。
・条件:国際条約に基づく人権や労働者の権利を、重大かつ計画的に侵害した場合に特恵待遇を停止する権限を英国政府が引き続き所有。新たに反汚職、気候変動、環境に関する国際条約も、停止の根拠とする国際条約のリストに追加。拡張特恵関税の対象は経済的な脆弱性のみにより決定し、脆弱(ぜいじゃく)性の評価に当たっては、現在の輸出多角化の条件のみを適用。政府はDCTS導入後1年間に新たな基準の検討を実施。現在の拡張枠組みの対象国については、導入から3年間は、拡張特恵関税の対象国とする。
(注)例えば、エチオピア(後発開発途上国)から英国に輸出する場合、当該輸出品にケニア(英国とのEPA締結国)産の原材料でEPAの関税率がゼロのものを使用している場合、エチオピア原産とみなすことができる。
(山田恭之)
(英国、アフリカ、アジア、オセアニア、米州)
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