世界最大規模のカーボンクレジット発行に着手

(ガボン)

アビジャン発

2022年08月02日

ガボンのリー・ホワイト環境相は、6月24~25日にルワンダで開催された英連邦首脳会議(2022年7月8日記事参照)で、カーボンオフセット市場で二酸化炭素(CO2)9,000万トンのカーボンクレジットを発行する予定と発表した。世界最大規模のカーボンクレジットの発行となる。

このカーボンクレジットの創出は、国連気候変動枠組み条約のREDD+メカニズム(注1)によって実現される。ガボンは、気候変動対策活動から得られる排出削減量・吸収量を認証し、クレジットとして発行する枠組みのArchitecture for REDD+ Transactions Program(ART)にThe REDD+ Environmental Excellence Standard(TREES)プログラム(注2)の登録を申請しており、4月に承認されていた。今回のガボンによる申請は、同国の2,350万ヘクタールに及ぶ森林全体を対象としたプロジェクトで、これがカーボンクレジットの原資となる。認定検証機関による排出削減量の検証を受け次第、ART の下でクレジットを発行することが認められる。

ホワイト環境相によると、「ガボン政府は11月にエジプトで開催予定の国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)までに、CO2 1億8,700万トンのカーボンクレジットを発行する準備を進めており、そのうち9,000万トンをカーボンオフセット市場で取引する」という。カーボンオフセットのデータを提供するアライド・オフセットの試算によると、ガボンが着手する9,000万トンのカーボンクレジット取引は、同国に2億9,100万ドルの売却益をもたらすとされる。

ガボンは産油国ではあるが、近年は石油埋蔵量が減少しており、政府は経済多角化にかじを切っている。同国の森林はアマゾンに次ぐ世界第2位の熱帯林地域のコンゴ盆地の一部を形成するなど、国土の88%を覆っており、石油、マンガン鉱、木材の3品目で輸出の9割を占めるが、政府は林業のさらなる成長のために持続可能な森林経営を推進している。2021年6月には、アフリカで初めてCO2排出量削減と吸収に貢献する森林保全の実績が評価され、「中部アフリカ森林イニシアチブ(CAFI)」(注3)の一環としてノルウェーとの間で結んだ10年間で総額1億5,000万ドルを拠出するプログラムから1,700万ドルが支払われた。

(注1)途上国での森林減少・劣化の抑制や持続可能な森林経営などによって、温室効果ガス排出量を削減あるいは吸収量を増大させる取り組みに排出権などのインセンティブを与える国際的メカニズム。

(注2)2020年2月に、管轄区域や国レベルの排出削減量をクレジット化することを目的とした独自の基準。

(注3)カメルーン、中央アフリカ、コンゴ民主共和国、コンゴ共和国、赤道ギニア、ガボンのコンゴ盆地6カ国が実施するREDD+を先進国(ノルウェー、フランス、ドイツ、英国など)や国際機関(国連開発計画、国連食糧農業機関、世界銀行など)が協調して支援し、地球規模の気候変動対策と同時に、各国の経済社会開発を促進するための国際的資金枠組み。

(渡辺久美子)

(ガボン)

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