9月から小売業に「最低賃金」、2024年まで毎年引き上げ

(シンガポール)

シンガポール発

2022年08月22日

シンガポール人材省は815日、小売業で働く国民(永住権者を含む)を対象に91日から、職種と技能に応じて賃金を段階的に引き上げる「累進的賃金モデル(PWM)」の導入を雇用主に義務付けると発表した。これにより、小売業においてフルタイムで働く国民の総月給は、1,850シンガポール・ドル(約181,300円、Sドル、1Sドル=約98円)以上に設定される。PWMを導入しない雇用主は、外国人労働者の就労査証を申請する資格を失う。

人材省は、同日に公表された小売業の給与に関する政労使の提言に基づき、小売業でフルタイム、パートタイムで働く国民の最低総賃金を20222024年に、段階的に引き上げる。例えば、フルタイムの販売員とレジ担当者の場合、202291日から1,850Sドル以上、202391日から1,975Sドル以上、202491日から2,175Sドル以上へと、2年間で約18%引き上げられる(職務ごとの最低賃金の引き上げスケジュールは添付資料表参照)。また、人材省は小売業で働く労働者のスキル向上のため、それぞれの職務に応じた研修の履行を義務付ける。研修の具体的な内容については後日、発表される予定。

今回の小売業へのPWM導入に当たっては、低所得の国民の給与引き上げ幅の一部を政府が負担する「累進給与クレジット・スキーム(PWCS、注1)」の支援対象となる。人材省はPWMの導入の猶予期間として、91日から6カ月間、導入を怠っても外国人労働者の就労査証申請を取り消さないとしている。

清掃や保安など職種や職務ごとに、最低賃金を設定

シンガポール政府はこれまで、「最低賃金」を設定していない。しかし、政府は低所得者の給与の底上げのため、低所得者層の多い一部の職業についてPWMを設定している。人材省は20149月から清掃業、20166月から街路樹や庭木の剪定(せんてい)などを行う造園業(ランドスケープ)、同年9月から保安業について、それぞれ職種別のPMWを導入した。また、2022年からは、エレベーター・エスカレーターのメンテナンス業務の従事者を対象にPWMの導入を義務付けている(注2)。さらに、同省は2021830日に、202291日から小売業、202331日から飲食サービス、202371日からごみ処理部門でそれぞれ働く国民について、PWMを導入する、との政労使の勧告を受け入れていた。

(注1)「累進給与クレジット・スキーム(PWCS)」は、2022年度政府予算案で導入されたスキームで、政府が一定の期間について国民(永住権者を含む)の給与引き上げ幅の最大75%を負担するもの。詳細は国税庁のホームページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

(注2)それぞれの業界、業種ごとの最低賃金は、人材省の清掃業外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます造園業外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます保安業外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますエレベーター・エスカレーターのメンテナンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますのそれぞれのPWMのページを参照。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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