スリランカ日系企業、経済危機で3分の2の企業が操業に悪影響

(スリランカ)

コロンボ発

2022年08月03日

ジェトロはスリランカにおける経済危機の状況に関し、スリランカ日本商工会と共同で、714日から22日にかけてスリランカに所在する日系企業74社に対し、スリランカの経済危機による影響に関する緊急アンケートを実施した。回答企業34社の66.7%が「すでに悪影響がある/悪影響が予想される」と回答した。

具体的な影響(複数回答)では、「従業員出勤率低下」「在宅勤務にシフトして業務継続」「海外バイヤーからの受注の低下」「一時的な工業操業停止」などの回答があがった。悪影響の理由として、「燃料不足」「資材高騰」「交通手段の減便」「レピュテーションリスク」などの声が聞かれた。一方、「今のところ影響はない/影響は予想しにくい」とした企業は30.3%だった。

経済危機下の売り上げの変化については、「売り上げが減少した、またはゼロ」と回答した企業は全体の60.6%に上った。この要因として、「物流問題(コンテナ不足によるコロンボ港の抜港)」「ガソリン・(自家発電施設用の)燃料不足」「代金回収の困難」「金融決済の困難(信用状の開設や送金の困難)」「スリランカ国内市場の著しい減少」「欧米諸国取引先との関係変化」などが挙げられた。「売り上げは横ばい」とした企業が15.2%、売り上げが増加したと回答した企業は12.1%あった。

現時点の運営ステータスについて、回答企業のうち75.9%が「通常どおり」と回答。「一部事業の停止(一時的な停止を含む)」としている企業は10.3%、「全面的な操業停止」は3.4%だった。回答企業の中では、「撤退済み、もしくは撤退を決定」とした企業はなかった。

経済危機下の厳しいビジネス環境の下、「通常どおり」に運営ができている理由として、燃料不足問題については、「追加的コストをかけて燃料を取り扱うブローカーなどを活用しながら、何とか燃料を確保している」「公共交通機関が間引き運行されているなか、従業員の出勤率低下に対処すべく、自社でバスを仕立てるなどして労働力を確保している」、物流問題(部品・部材の確保)については、「従前より部品・部材の在庫を、3カ月から6カ月分と厚めに保管して部品不足を防いでいる」など、企業ごとの工夫と自助努力がみられた。ただし、燃料不足や物流問題が今後さらに3カ月、半年と長期化すれば、「通常どおり」の運営を維持するのは難しくなるだろう、との声も聞かれた。

今後の事業見通しでは、現状維持(38.2%)、分からない(35.3%)、縮小(11.8%)、拡大する(5.9%)、撤退する(2.9%)の順に多かった。前出の燃料不足や物流問題に加えて、新型コロナ禍を通じて各種輸入規制、外貨のルピー強制換金、送金規制などが敷かれ、厳しいビジネス環境が続いていることから、現状では前向きな見通しが難しい様子がうかがえた。

緊急アンケートは、スリランカ日本商工会の協力の下、同商工会会員企業74社を対象に実施し、34社から回答を得た。回答企業の内訳は、製造業11社、建設業8社、サービス業15社だった。

(糸長真知)

(スリランカ)

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