政府、公共施設や民間部門向けの省エネ対策を施行

(スペイン)

マドリード発

2022年08月08日

スペイン政府は81日、公共施設や民間部門の建物向けの省エネ・空調エネルギー管理計画に関する法令を閣議決定した(政府発表、スペイン語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます89日から段階的に施行され、2023111日までの適用となる。

同法令によると、行政機関の建物、飲食店を含む商業・オフィス施設、映画館などの文化施設や会議場、駅や空港などの公共交通機関を対象に、再生可能エネルギー導入の有無にかかわらず、冷房温度は最低27度、暖房温度は最高19度の設定限度を設ける。店舗のショーウインドーや無人の公共建物の照明は午後10時以降、消灯しなければならない。また、9月末以降は空調設備稼働中の建物で扉を開放したままにすることを禁止し、自動閉鎖装置の設置を義務付ける。対象施設には「省エネ対策中」の表示やエネルギー効率検査実施の前倒しを義務付けるほか、行政機関による省エネ改修工事の迅速化も定めた。

違反した場合は、6万~最高1億ユーロの罰金を科す。

猛暑での冷房制限に対しては、ウエーターがテラスと店内を行き来し、厨房(ちゅうぼう)が高温になる飲食業界や、客が試着する衣料小売業の経営者を中心に反発が起こっている。テレサ・リベラ第3副首相兼環境移行・人口問題相は5日、ラジオ番組で「オフィスなどとは異なり、肉体労働を伴う飲食店などでは柔軟に適用すべき」と釈明した。

今回の閣議決定は、7月下旬のEU理事会(閣僚理事会)のエネルギー相会合で、ロシアからの天然ガス供給停止の可能性に備え、EUの全加盟国が天然ガス消費量を自主的に原則として15%削減すると合意したことを受け、緊急実施されたもの(2022年7月28日記事参照)。スペインは国内にある複数の液化天然ガス(LNG)再ガス化プラントを通じた安定供給への貢献が考慮され、他の加盟国よりも低い7%の削減率が割り当てられている。政府は9月末をめどに、より具体的な削減計画を欧州委員会に提出する予定。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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