EU理事会、ガス需要15%削減に政治合意、一部除外を認める

(EU、ロシア)

欧州ロシアCIS課

2022年07月28日

EU理事会(閣僚理事会)は726日、ロシア産天然ガスの供給停止の可能性に備え、EU域内のエネルギーの安定供給の確保のため、全加盟国が2023年春まで天然ガス消費量を自主的に15%削減することで政治合意した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。天然ガスの需要が増える冬季の供給不足を懸念し、欧州委員会は2022720日にEU理事会に対し、ガス需要削減計画と削減目標の義務化に関する規則案を提案していた(2022年7月21日記事参照)。

今回の合意により、全加盟国は81日から2023331日までの期間、過去5年の同時期平均と比較して、天然ガスの消費量を自主的に15%削減することが求められる。削減目標の達成のための需要削減策などの手段は、各加盟国が決定する。

ただし、加盟国による天然ガスへの依存度や貯蔵量の差異に配慮して、多くの例外を認めたかたちでの合意となった。他の加盟国の天然ガスのネットワークと相互接続されていない加盟国は、相当量の天然ガスを他に開放できないことから、削減義務化から除外される。また、電力網が欧州の電力システムと同期しておらず、電力生産のために天然ガスに大きく依存している加盟国も、電力供給危機のリスクを回避するため除外される。さらに、他の加盟国との相互接続が限定的で、当該国の輸出能力または国内の液化天然ガス(LNG)設備の最大限を使用し、他の加盟国にガスを再輸送している場合、需要削減義務の緩和のための例外措置を要求することができる。加盟国はまた、ガス貯蔵量目標を超過した場合や、重要な産業の原料としてガスに大きく依存している場合、過去1年間の天然ガス消費量が過去5年間の平均と比較して少なくとも8%増加している場合においても、例外措置を要求することできる。

また、欧州委の規則案では、加盟国による自主的な削減策にもかかわらず、エネルギー需給が逼迫した場合、EUレベルの警報を発動するとしていたが、今回、警報の発動に当たってのEU理事会の役割を強化することで合意した。欧州委は、深刻なガス不足または非常に高いガス需要のリスクがある場合、あるいは5つ以上の加盟国が国家レベルでの警報を宣言し、欧州委に要請した場合、EUレベルの警報の発動をEU理事会に提案する。同提案に基づき、EU理事会の実施決定によってEUレベルの警報を発動することになる。

今回の合意に先立ち、一部加盟国では既に対応を図っている。例えば、フランスは724日、冷房中の店舗のドア閉鎖の義務化や深夜の広告照明の禁止の方針を発表(2022年7月26日記事参照)したほか、エリザベット・ボルヌ首相は26日に政府・公的機関の施設における冷暖房の使用制限や電子機器、照明の計画的消灯など具体的な省エネの実施を求めている。

今回、合意された規則案は、ウクライナ情勢に伴うエネルギー供給不足の危機に対応するための特別措置で、適用は1年間となる。欧州委はEU全体のガス供給の状況に応じ、延長を検討するための見直しを20235月までに実施する。

(土屋朋美)

(EU、ロシア)

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